今年6月に89歳で亡くなった〝ミスター・プロ野球〟長嶋茂雄さん(巨人終身名誉監督)の「お別れの会」が21日に東京ドームで行われ、約3万2400人の球界関係者や各界の著名人、ファンらが足を運んだ。来年からは「長嶋茂雄賞」が新設されるが、戦後の日本を象徴するスーパースターを冠にした賞の敷居は高い。しかも昨今は「投高打低」の傾向が顕著。天国から届けられたミスターの〝挑戦状〟に球界全体の奮起が待たれている。

 式典は2部構成で行われ、午前中には王貞治氏(85=ソフトバンク球団会長)や愛弟子の松井秀喜氏(51=ヤンキースGM特別アドバイザー)のほか俳優の北大路欣也(82)が「お別れの言葉」を述べた。

 長嶋さんが最期まで気にかけた球界には、来年から新たに「長嶋茂雄賞」が設けられる。日本野球機構(NPB)によるとポストシーズンを含む公式戦の「走攻守」で「顕著な活躍」を見せ、グラウンド上のプレーでファンを魅了するだけでなく「日本プロ野球の文化的公共財としての価値向上に貢献した野手」を選出、表彰するとしている。

 生前の長嶋さんは野球を通じ、戦後の日本を明るく照らす太陽のような存在だった。それだけに、球界関係者からは「長嶋さんと比べたところで次元が違いすぎる」「これから選ばれる選考委員も大変でしょう。最初に選んだ選手が賞の基準になる。賞が賞だけにハードルを下げるわけにもいかない」と重すぎるといった声も少なからず聞かれている。

 しかも、賞が「野手」に限定されていることも敷居を高くしている。球界OBの一人は「『投高打低』が進み、野球の華と言われるホームランも減った。投手戦も野球の醍醐味ではあるけれど、野球の原点は点取りゲーム。このままの傾向が続けば、誰も受賞できないだろう」と警鐘を鳴らした。

 今季の12球団では佐藤輝(阪神)の40本塁打が最多。次点はレイエス(日本ハム)の32本塁打で2選手以外は23発以下だった。また、セ・リーグの3割打者は小園(広島=3割9厘)と泉口(巨人=3割1厘)の2人、パは牧原大(ソフトバンク=3割4厘)の1人だけだった。

 一方の投手陣は好成績が続出。セで防御率1点台だったのは才木(阪神=1・55)とケイ(DeNA=1・74)の2人、パに至ってはモイネロ(ソフトバンク=1・46)、北山(日本ハム=1・63)、大関(ソフトバンク=1・66)、今井(西武=1・92)の4人となった。

 この傾向は今季に限ったことではなく、昨季は40発以上がセパともに不在。30発以上は村上(ヤクルト=33本塁打)と山川(ソフトバンク=34本塁打)の2人だけで、3割以上もセがオースティン(DeNA=3割1分6厘)、サンタナ(ヤクルト=3割1分5厘)の2人、パは近藤(ソフトバンク=3割1分4厘)だけだった。

 打者にとってはまさに〝冬の時代〟。だが、毎年「該当者なし」では長嶋さんに顔向けできないだろう。別のOBも「二刀流なんか無理だと言われた大谷翔平も不可能を可能にした。賞の名前にふさわしい選手が出てこなければ寂しいし、出てきてほしい」と奮起を期待した。

娘の長島三奈さんは長嶋茂雄さんの祭壇に向かって笑顔を見せた
娘の長島三奈さんは長嶋茂雄さんの祭壇に向かって笑顔を見せた

 NPBは選考基準などの詳細は今後決定するとしているが、天国のミスターもスーパースターの出現を待ち望んでいるに違いない。