セ・リーグ独走Vを果たした阪神の歓喜の輪の中に、坂本誠志郎捕手(31)の穏やかな笑顔があった。今季はキャリアハイを大きく超える103試合でマスクをかぶり、投手陣をリード。藤川虎の「扇の要」としてリーグ優勝に貢献した。

 だが、本人は「正捕手」という肩書にこだわりはない。「正捕手とかそういうのはあまり考えていない。基準もよく分からないし、今まで意識したこともない。とにかく試合に出続けたいと思ってやってきた。今季は一番出場できたが、満足はしていない。ただ、少しは充実している感覚はあります」と話す。

 2015年のドラフト2位で明大から入団し、ルーキーイヤーの16年は28試合の出場にとどまった。その後も控え捕手としてシーズン20~50試合ほどの出場が続き、22年は60試合。リーグ優勝した23年は骨折で離脱した梅野に代わって84試合に出場し〝優勝捕手〟となり、着実に実力を伸ばしてきた。

 プロ入り以来、一貫して重視してきたのは準備。「準備をして試合に入ることは、プロに入ってからずっと続けてきた。変えようと思ったことはない」。これまで金本、矢野、岡田とそれぞれに個性のある監督の下で経験を積み、野球観は確実に広がった。全てのベクトルが合致したのが今季なのかもしれない。

 新たに指揮を執った藤川監督については「グラウンドに出れば、自由にやらせてくれる。勝つことはベンチの役割で、選手には自分のパフォーマンスを発揮することに集中させてくれる」と感謝を口にした。

 派手さよりも準備と積み重ねで信頼を勝ち取り、チームを頂点へ導いた坂本。静かな語り口の奥に〝司令塔〟としての矜持がにじみ出ていた。