〝真佑の1ミリ〟でメダルに王手だ。バレーボール女子の世界選手権(3日、タイ・バンコク)、準々決勝が行われ、世界ランキング4位の日本は同8位のオランダに3―2で逆転勝ち。決勝トーナメント1回戦で世界選手権2連覇中のセルビアを下した難敵を大熱戦の末に破り、15年ぶりのメダルへあと1勝とした。エースで主将の石川真佑(25=ノバラ)はチーム2位の25得点をマークし、重要な局面で次々と決める並外れた勝負強さを披露した。

 石川に勝利の女神が降臨した。2―2で迎えた第5セットは10―11の場面でスパイクを決めて同点に追いつくと、次のプレーではスパイクが一度はアウトの判定に。ここで日本側はチャレンジ。ビデオ判定の末、相手の指先がかすかにボールに触れており、ブロックタッチが認められて勝ち越しに成功した。

〝真佑の1ミリ〟で一気に流れを引き寄せると日本は得点を重ね、最後はレフトからまたも石川がスパイクをたたき込んで勝負あり。コート上ではチーム全員で輪をつくり、喜びを爆発させた。

 この日は第1セットからオランダペースで試合が進んだ。じわじわと追い詰められる嫌な展開。それでも石川は心が折れるどころか、逆に底力を発揮した。「やっぱり苦しい試合の時こそ、本当に踏ん張りどころだと思った」。昨夏のパリ五輪後から任された主将として「今まで最後に(点数を)取り切れなかった分を、しっかり取り切ろうと思って(スパイクを)打ち込んだ」と勝負を決める一撃に、思わず頬を緩めた。

 際どい場面でことごとくチャンスをものにした勝負強さは、本場イタリアで磨かれた。

 2023―24年シーズンから武者修行し、24―25年シーズンは強豪ノバラでチームトップの344得点と大活躍。欧州の強豪クラブが集うCEV杯では優勝に大きく貢献した。海外の猛者としのぎを削る日々を通じて数々の壁にぶち当たってきたが、そこから肌で実感したのが、ここ一番での集中力だ。

「勝負どころでやっぱり海外の選手は1つギアが上がってくるので、そういったところは自分も勉強になる。代表で世界のトップを目指すとなった時に、そういうギアチェンジもすごく大事になると思っている」

 負けたら終わりの一発勝負は、終盤の1点が勝敗を大きく左右する。チームに流れをもたらすためにはどういったパフォーマンスが必要か――。海外勢が持つ鋭い嗅覚を第一線で身につけた石川は、1点が運命を分けるシーンで見事にギアチェンジ。大舞台の最終セットで放った圧倒的オーラは、まるでギリシャ神話に登場する戦の女神アテナが乗り移ったかのようだった。

 主軸として挑んだパリ五輪は、無念の1次リーグ敗退。フェルハト・アクバシュ新監督の初陣となった6~7月のネーションズリーグは4位だった。28年ロサンゼルス五輪に向けて上々のスタートを切った一方で、ポーランドとの3位決定戦後には「もっとレベルアップが必要」と悔しさも吐露。誰よりも強い覚悟を持ってコートに立っている。

 6日の準決勝は、トルコ―米国戦の勝者と激突する。今後も厳しい戦いが続くだけに、石川は腹をくくっている。「今日みたいな苦しい展開が続くと思うけど、チーム全員でしっかり勝ちにいきたい」。接戦を制した自信を胸に、新たな扉を切り開くことはできるか。