来年3月に開幕予定の第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を巡り、日本国内での放映権を米動画配信大手「Netflix(ネットフリックス)」が独占取得した。過去大会で地上波中継によって国民的関心を集めた舞台が有料ストリーミングサービスに限定されることになり、ファンの間に動揺が拡大。一部の球界関係者からは、ドジャース・大谷翔平投手(31)にまで事態打開の「SOS」を求める声が上がるなど異例の事態となっている。

 WBCを運営するワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI)と契約を締結したネットフリックスが26日に独占放映権の取得を発表。全47試合が同社でライブ配信されることが明らかになった。2023年の前回大会では、テレビ朝日やTBSでの地上波放送に加え、アマゾンプライム・ビデオやJ SPORTSも参入。侍ジャパンが米国を下して優勝を飾った決勝戦は、平日午前にもかかわらず地上波で平均42・4%(関東地区・ビデオリサーチ社調べ)の高視聴率を記録し、国民的イベントとして社会現象を巻き起こした。しかしながら次回大会は、同様の盛り上がりが見込めない可能性もささやかれ始めている。

 NPBは26日に出した声明で「本大会の放送・配信に関する権利は主催者であるWBCIが独占的に保有しており、今回の決定についてはWBCIから事前に通告を受けておりました」と説明。同大会のC組・東京プール(来年3月5日から10日)主催者側の読売新聞社も同日に「本大会では、WBCIが当社を通さずに直接Netflixに対し、東京プールを含む全試合について、日本国内での放送・配信権を付与しました」としながら「当社は今後も東京プールの主催者として、多くの方々に本大会を楽しんでいただけるよう引き続き努めてまいります」と理解を求め、報道目的での試合映像は使用可能であることも示した。中継権を持たないNHKや民放各社は報道目的であれば、試合のハイライト映像を使用できる見込みだ。

 ただ、それも試合中継ではなく、あくまで限定的な映像となることからファン離れを懸念する声は根強い。実際にSNSでは今も「野球ファン以外への波及力がなくなる」「地上波なしでは子供たちが見られない」などといったコメントが相次ぐ。放映権料高騰の影響で各局が手を引かざるを得ない構図が透ける一方、国際大会の在り方を問う声も広がっている。

 野球界だけではない。サッカー界でも、森保一監督率いる日本代表の試合が地上波で放送されないケースが増えており「それがコア層以外のファン離れを招き、人気低下につながっている」との指摘も出ているほどだ。

 こうした中、球界関係者の一部からは驚きの〝むちゃぶり〟も聞こえてくる。「こちらのわがままであることは重々承知しているが」と前置きした上で「大谷選手がネットフリックスやWBCIに『日本戦だけは無料配信に』と直談判してくれれば、事態が動くかもしれない」との期待だ。ドジャースの大谷は同大会でも侍ジャパンの主軸としての活躍が見込まれており、世界的な影響力を持つ〝キラーコンテンツ〟。そして誰よりも野球人気の行方を気にかけているスーパースターだ。その存在が交渉カードになり得ると、ワラにもすがる思いでSOSを送る関係者もいる。

 もっとも、商業契約を前提とする今回の配信形態が変更される保証は全くない。普通に考えれば、大谷本人が動く可能性も限りなくゼロに近いだろう。ただ、球界がスター選手に頼らざるを得ないほどの危機感を抱いていること自体、WBCが日本にとっていかに特別な大会であるかを示している。地上波から消えようとしている国民的イベントを、果たしてネット配信だけで盛り上げることができるのか。来春、侍ジャパンが再び頂点を目指す世界のひのき舞台はグラウンドの内外で大きな注目を集めることになりそうだ。