戦後の国民的スターで3日に亡くなった長嶋茂雄さんの葬儀が8日までに都内で執り行われた。この日の告別式には王貞治氏(85)や松井秀喜氏(50)や巨人OBら96人が参列し、最後の別れを惜しんだ。監督として名勝負を繰り広げてきた中でも、1994年の中日との「10・8決戦」は最たるもの。球史に残る伝説の一戦にはまだまだ知られざるミスターの仰天発言があった。

 葬儀を終え、「球界の太陽」が天国へ旅立ったが、これまで残してきた数々の伝説や逸話は数知れない。

 シーズン最終戦で同率首位、勝った方が優勝というナゴヤ球場での「10・8決戦」。結果は巨人が“巨人キラー”として名をはせた今中を攻略して優勝を決めたが、その舞台裏では長嶋さんのビックリ発言でチームがザワついたという。

 同年の今中は巨人戦で5勝2敗、防御率2.45と好相性。本拠地の巨人戦に限れば11連勝中で長嶋巨人の天敵だった。当時を知る関係者の一人はこう明かす。

「今思えば『癖』を見抜いてデータとして本格的に取り入れたのは、球団の中で長嶋さんが最初だった。10・8に先発予定だった今中を攻略するべく、前日ミーティングでは監督をはじめみんなで今中の投球動画を繰り返し見たんです。当時は引きの映像が主流だった中、バストアップの映像を何度も見て、彼の『癖』を共有したんです」

 勝てば優勝、負ければV逸。まさに天下分け目の決戦で誰もが「今中を打つんだ!」と血まなこになりながら分析に明け暮れた。そんな緊張感が張り詰めた現場で、ミスターからまさかの言葉が飛び出した。

「それで、明日は誰が投げるんだい?」

 その場にいた全員がひっくり返りそうになったことは言うまでもない…。前出関係者は「みんなも『え?』となったんですが、冗談にも聞こえないし、もちろん笑うわけにもいかず…。『今中です』と伝えたら『そうか、今中か』と。ミスターらしいですよね(笑い)」と懐かしんだ。

 どんなに差し迫った状況でも「長嶋茂雄」は「長嶋茂雄」であり続けたということなのか…。見事に難敵を下し、歓喜の瞬間を迎えた。

「長嶋さんは勝負になるとカッとなるけど、それ以外ではとにかく優しくて周囲を和ませてくれる方だった」(同)。歴史的勝利は独特な世界観を持つミスターだからこそ成し遂げられたのかもしれない。