証券口座の乗っ取りについて警視庁などが不正アクセス禁止法違反の疑いで捜査を開始したという。この事案をめぐってはシニア投資家への余波がささやかれている。

 5月、元手300万円で株式投資を始め、約20年で累計利益100億円を達成したカリスマ投資家のテスタ氏は「X」(旧ツイッター)で「乗っ取られました」と自身の証券会社の口座が乗っ取られたことを報告し、大きな注目を集めた。その後も口座乗っ取りは増え続け、1月~4月までの4か月間で3500件を超え、被害額は3000億円に上る。

 その手口は証券口座をハッキングなどで乗っ取り、勝手に株式を売買するというサイバー犯罪だ。「お金を直接盗むのではなく、個人の保有株を勝手に売却し、代わりに安い株を大量に購入します。犯行グループは株価が上がったところで売り抜ける相場操縦で利益を得ています」(経済ジャーナリスト)

 事態を重く見た証券各社は多要素認証でセキュリティー対策の強化を利用者に呼びかけている。多要素認証とはログイン時に複数の認証要素を要求するセキュリティー対策。しかし、これがシニア投資家の離脱を招いているという。

 ネット証券の利用者が急増したのは、簡単に株を売買できる利便性。しかしその利便性を優先するがゆえにセキュリティー対策の不備を招いたといえる。これまではパスワードだけでログインできていたが、多要素認証などでログインが複雑化しシニア投資家は困惑しているという。

 70代の男性投資家は「ログインの仕方が複雑過ぎて私らは対応できない。仕事をやめてボケ防止のためでもあったんですが老後資金を失ったら元も子もないですから辞めようと思います」と話した。男性は今保有している株を含み損ながら売却することに。しかし「午前中に一気に複数の株を売却しました。証券会社が不審に思ったのか本人確認を求める画面が表示され、売買ができなくなりました」とため息をもらした。

 セキュリティー強化とシニア投資家の離脱。証券会社にとっては頭の痛い問題といえそうだ。