【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】ある日のドジャースのロッカー。つかみどころがないというか、ツンデレというのか…。なかなか深掘りできずにいるタナー・スコット投手(30)が珍しく興味を示してくれたので、野球と子育てについて話をした。1歳の愛息・ボー君の話で冗舌になるのは2回目だ。遠征でそばにいられないジレンマをどう乗り越えているのか。

「フェイスタイム(ビデオ通話)は本当に素晴らしい発明。エバンもそう思うだろ?」

 そう言ってロッカーの右隣にいるエバン・フィリップス投手(30)を話に引き入れた。そんなタナーに慣れているのだろう。「テクノロジーがあるおかげで、彼らの顔が見られるのは大きいよね」とまとめるエバン。そこでタナーが再び「ビデオ通話がなかったら変すぎる。例えば…」と、今度は左隣のカービー・イエーツ投手(38)に話を振る。

ドジャースに加入した38歳のカービー・イエーツ(ロイター)
ドジャースに加入した38歳のカービー・イエーツ(ロイター)

「カービー、固定電話で話すってどんな感じ?」

 タナーはそう言いながら、少しいたずらが過ぎたと思ったようで「ごめん、ジョーク。でも、言わずにはいられなかった」と笑ったが、カービーもまた慣れた感じで支度する手を止めずに「君らは電話をとって、父親の友達のために伝言をメモに残したことなんてないだろう?」と話に乗ってきた。悪ふざけの許可を得たタナーはまるで少年のように「回すやつだった? ダイヤル式電話!?」とうれしそうに返す。

 これには無表情を決め込んでいたカービーの口元に、うっすらと笑いが浮かぶ。

「君は電話に『ハロー』と出た後、母親か父親を呼びに行くというのがどんなものか、全く知らないだろう」

 すると、このやりとりを聞いていたエバンが「最近の子の電話のジェスチャーって知ってる? (小指と親指を立てて耳に当てるしぐさをしながら)僕でもこうなのに、弟は手のひらをベタッと耳に当てるんだよ。すごく変」とシェア。笑いが止まり、3人とも「それは変だ」と納得の表情を浮かべた。

 そんな掛け合いが続いた中、タナーがこちらを見て「いったい何の話をしていたっけ」と言うので「初めてのおむつ替え体験」に話題を変えてみると…。

「あれは黒いタール。ベタベタしていてにおいはないけど、赤ちゃんがミルクを飲み始めると、においがし始めるんだ。普通の人間のご飯を食べ始める段階になると、ワオ、もうひどいもんさ」

ドジャースの右腕エバン・フィリップス
ドジャースの右腕エバン・フィリップス

 今思い出すと笑いが止まらないのだが、この時は早口だったタナーの言葉が何を意味しているのか、頭が追いつかずにいると、エバンが再び助け舟を出してくれた。

「それで、初めてのおむつ替えは成功したのか、しなかったのか。おむつの中身じゃなくてさ」

「もちろん! 簡単だもん。子供を押さえ、マジックテープをちょちょいのちょいって。ボーは嫌がるけどね。初めてでできなかったのは、おくるみだ。君はできたか? あれ、難しいだろ。僕は今やもうプロだけどね」。当然のように語るタナー節がなんとなく分かってきた。

 ただ、エバンも触発されて「僕の初めては病院で看護師さんに教えてもらいながら、両足をグイッと上に持ち上げた時。我が息子ながらあの射撃力…」と、この先の言葉はご想像にお任せする。

 ポンポンとリズム良くはずむ彼らの掛け合いに、終始笑いが止まらない。毎晩、出番を待つブルペンでの会話もこんな感じなのだろうか。選手らにとっても長いシーズンだが、こういう時間を分けてもらうと「よし、あと6か月頑張ろう!」と元気が出る。あれ、野球シーズンってまだ半年もあるのか…。

 ☆タナー・スコット 1994年7月22日、オハイオ州出身。2014年のMLBドラフト6巡目(全体181位)でオリオールズに入団。17年9月20日のレッドックス戦でメジャーデビュー。22年からはトレード移籍したマーリンズでプレー。24年7月にパドレスにトレードとなり、同年は2球団で計72試合に登板して防御率1・75。地区シリーズで4度対戦した大谷から4三振を奪った〝大谷キラー〟で、オフにFAとなりドジャース入り。