【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「マジでマジでいい人! 何ていうか、相手に対してとてもオープンな温かさを持っている人。まるで彼自身が私と話すことに興味を持っているかのような好奇心。こっちの緊張を自然に解く。話しやすい人は結構いるけど、その誰とも違う寛容な安心感」

 カーソン・ケリーとのインタビュー後に書き記した取材メモだ。カブスの番記者に「最も話しやすいのは誰?」と尋ねると、真っ先に彼の名前が返ってきた。なるほど、その強烈な人当たりの良さに、すっかりファンになってしまった。

 世間は大谷翔平選手の第1子誕生で祝福ムード一色だが、カーソンとの話題がまさに「父親になったことで生まれた選手としての変化」だった。

「結婚して子供ができてからかな。(野球と私生活の切り替えを)できるようになったのは。球場でどんな一日だったとしても、家に帰れば2歳の息子は全くお構いなし。ただ、パパとハグして一緒に遊びたいだけ。それが自然と気持ちを切り替えるきっかけになって、良き父、良き夫でいることに集中できるんだ」

 文章だけで伝え切れないが、もともと愛嬌のある彼が、子供の話になると一層幸せな表情をする様子を思い浮かべてほしい。4か月前には次男も生まれ、子育ての真っ最中。睡眠バランスとの戦いと言ったカーソン。時間的な余裕は減ったものの、逆に精神的余裕ができたという。

「以前は自分のアイデンティティーが野球となってしまい過ぎていた。今でも2時、3時、4時と朝まで起きていて『どうやったらもっとうまくなるんだろう。何をしたらうまくなるんだろう』と考え、解けない迷路に迷い込んでいたことを鮮明に覚えているよ。でも、子供がいると寝なきゃならない。彼らのために時間をつくりたいから、考えていられない。自分が何を信じて、どう変えていくべきかっていう考えをクリアに整理するようになって、それが間違いなく選手としての自分を成長させてくれていると感じるんだ」

 一般的に人は失敗することを避けたいものだが、野球に関しては3割打者になることも難しく「失敗のスポーツ」とも呼ばれる。

「僕ら野球選手は、たぶん『失敗』に引かれているんだと思う」とカーソン。「常に失敗と向き合い続けるという挑戦に。4打数ノーヒットの日もあれば、4打数4安打の日もある。ゲームを救うような守備をすることもあれば、逆にミスをすることもある。そういう『何が起こるか分からない』っていう部分。そんな中で最高でいることに挑み続けることが、僕たちにとってすごく魅力的なんだと思う」

 これまでにもスポーツ心理学のコーチ、先輩選手、本などを通じて試行錯誤してきたが、カーソンにとってのカギは「家族」だった。

「失敗の感覚を持ったまま子供に会ってハグするとね、プレッシャーが解けていくんだ。心が静まって、家での時間を楽しめると、翌日には再び活力を持って準備万端で臨めるんだ。その認識が大きくて。だから、父親になれたことは、僕にとって最高の出来事だったんだよ」

 ☆カーソン・ケリー 1994年7月14日、イリノイ州シカゴ出身。2012年のドラフト2巡目(全体86位)でカージナルスに三塁手として入団。14年から捕手に転向し、18年5月にメジャー初昇格。同年オフにダイヤモンドバックスにトレード移籍し、23年8月にタイガースに加入。24年7月末にはレンジャーズにトレードで移籍し、今季からカブスでプレー。3月31日(日本時間4月1日)には球団32年ぶりとなるサイクル安打を達成した。185センチ、86キロ。