【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#599】2023年4月、SNS上でとある奇妙な画像が出回り話題となった。その1枚の写真には、ボートに乗った体格の良い男性が、アザラシほどもあろうかという巨大な魚を抱えているのだが、驚くべきは魚の顔で、それは類人猿の、まるでゴリラと形容するほかないような奇妙な風貌なのだ。
発端となったのは、インスタグラムのとあるユーザーによる投稿。4月16日のその投稿には、画像とともに「カーライ湾で捕らえられたゴリラ・フィッシュです」というごく短いキャプションが付けられていた。
その翌日の17日には、ツイッター(現X)で別のユーザーがこの画像を取り上げ、より詳細な情報がもたらされた。その人物によると、「これはアルジェリア・ゴリラ・フィッシュだ」「彼らは通常、暖かい気候の間は近くの河川敷に生息し、交尾をする」「通常、体長3~4フィート(約90~120センチメートル)なので、これほど大きなものは初めて見た」「気候変動の影響に違いない」ということだ。
その後も「陸上に30個ほどの卵を産む」「繁殖期にはオスがメスをひきつけるために真っ赤になる」「50年近く生きる個体もある」「現地では現れると悪いことが起こる兆候と信じられている」といった情報が各ユーザーから発信された。
だが、このゴリラ・フィッシュは、当初から本物であるか疑わしいものとみなされていた。
そもそも、最初の投稿で捕獲場所と言われた「カーライ湾」は南米のトリニダード・トバゴにあり、アフリカ大陸のアルジェリアとは全く地域が異なっている。ツイッターで、なぜかいきなりアルジェリアという名が登場したのだ。
また、形態や生態の情報がそれだけありながら、これ以外のゴリラ・フィッシュに関する資料や画像が全く見つからないという事情も、不審さをより強くされる要因となった。
種明かしをすると、先に紹介したゴリラ・フィッシュの詳細を語っていた人物が、その投稿の最後に一言「…全部作り話だよ」とハッキリ言っているのだ。だが結果として、その人物の投稿などの影響によって、ゴリラ・フィッシュにあれこれそれらしい設定を大喜利のように付加させるという流れが形成されるに至った、というのがどうやら真相のようだ。
では、問題の画像そのものはなんだったのか。
これに関しては、CG・合成との疑いが強く指摘され、最終的には「人間と魚の間に不自然なピクセルの散在が見られる」という検証結果がもたらされ、ほぼ合成された画像で間違いないという判断が海外メディアなどで下されているとのこと。
UMAの歴史は、捏造の歴史であるとも言える。加工編集・合成、そして近年では生成AIといった形で数多くのフェイク情報が生み出された。ただ、ゴリラ・フィッシュはこの時限りのものでありながら、それに数々の設定が加えられていったという経緯が、他の一過性のUMAとは少々異なっているとも言える。
おそらく、設定を語り、またそれを受け入れた人々の多くは、はじめからフェイクであることを承知で楽しんでいたのではないだろうか。なんだかんだで、人々は物語を欲しているということが、ゴリラ・フィッシュによって如実に表れたと言ってもいいだろう。












