【菊地敏幸 辣腕スカウトの虎眼力(24)】2000年ドラフト4位で指名した阪神OBの赤星憲広。今の大活躍を見ていると、あのJRの車掌さんがプロ野球の世界を経て、立派にニュース番組でコメントしているなあと感心してしまいます。全国放送のプロ野球中継、情報番組でも頻繁に顔を見ますし、テレビ画面に向かっていると遠い世界に行ってしまった感覚になります。

 私は関東在住ですが、関西の記者の方々に聞くところによると野球の枠を超えて競馬の番組に出演したり、テレビコマーシャルにまで起用されているといいますから大したものです。

 9年間の現役生活で入団1年目から新人王、5年連続で盗塁王も獲得してくれました。リーグ優勝に貢献した03年と05年はベストナインにも選出されています。ゴールデン・グラブ賞は6度獲得ですから文句のつけようがない成績です。

 それでも阪神ファンの方々が今でも感じていると思うのですが、09年の突然の引退は残念でした。患っていた頸椎ヘルニアの状態が芳しくなく、引退後の日常生活にまで影響が出るとのことで決断したということでした。本人も球団スタッフも海外にまで情報を求め、可能性が1%でもあるならと現役続行の道を模索したそうです。最終的には球団側も各種のリスクなどを鑑み、引退の流れになったと聞きます。

 今の時代であれば育成契約からの再契約など、いろんな選択肢もあったかもしれません。それでも、最後は本人が決断したわけですから誰も口を出す余地はありません。

 しかし、何らかの形で球団に残すなどできなかったのかと思いますが、球団と本人とのやりとりは分かりませんから、余計なことは言えないですね。何度か阪神のコーチをというオファーもあったとウワサに聞きますが、体調面や当時の仕事の事情など複雑なんだろうと想像します。

 当時、ご両親はもう無理することはないよと思っていらっしゃいました。このご両親も独特でお母さんは詩吟をされていて、全国コンクールで優勝するほどの腕前。もともとは陸上でハードルをやっていたのかな。その遺伝子は確実に赤星の中で生きています。

 お父さんはボクシングをされていたそうで、あの赤星の闘争心はそこにつながるんですかね。今ではユーチューブなんかでも語り草ですが、スタンドからのヤジに食ってかかる姿も熱い男の証拠でしょうか。

 ご結婚が決まった時にはメールで連絡させてもらいました。「おめでとう。ご両親も喜んでるんだろうな」って。そしたらすぐに電話がかかってきてね。うれしいニュースでした。以前、お母さんが「息子が全然結婚する気がないから、菊地さん、誰かいない?」って言われたことがあったくらい晩婚でしたからね。

 愛知県の刈谷市から亜細亜大学、JR東日本を経て阪神タイガースとご縁のあった赤星憲広。現在でも人気者で当時のスポーツ紙担当記者やテレビ関係者ともいい関係を続けていると聞きます。安定した大企業からプロ野球の世界に引き入れて良かったなと思える成功例です。