オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第182回は「ほっほさん」だ。

 ある地方に住んでいる妖怪で、庭の池の中に設置されている石の上を「ホッホッホ」と言いながら飛んでいく。

 この妖怪が来ると雪が降るといわれている。雪の上の足跡は確認できるのだが、姿は見ることができない。季節の訪れを告げる“季節妖怪”だと言えよう。

 ある地方の老人たちは、雪の上の足跡を見ながら「ほっほさんが来たようだね」と言い、冬の訪れをしみじみと実感するのだという。

 初雪に関する俗信といえば、「初雪の山に登ってはいけない」というものがある。まだ誰も足跡をつけていない白い山肌に、足跡をつけるとたたりがあるのであろうか。

 ほかにも、雪の積もる高さを予想するものがある。例えば、カマキリの卵である。これは大概、木の枝に産みつけられるのだが、毎年、卵を産みつける場所が違うとされる。なぜか雪が最大限に積もる場所の上に産むのだという。カマキリには、雪が最大限積もる高さが予知できたのだろうか。

 雪上に足跡をつける妖怪としては、一つ目一本足の妖怪が想起できる。その代表的な例としては、岐阜県の「雪入道」、和歌山県の「ひとつだたら」、愛媛県の「雪婆(ゆきんば)」などが挙げられる。

 かつて日本人は、雪の上についた足跡を見て、妖怪を作り出し、その見えざる恐怖に震撼したのであろうか。