オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第177回は「夜の口」だ。

 とある地方に伝承されている妖怪である。夜中に死んだ人の最期の言葉や普段の口グセを面白おかしくマネた場合、襲ってくるという。なんとなく地方では葬式の帰りに言いそうな話題である。

 襲われる際には、崖から落下したようにまっ逆さまに闇夜に落ちてしまう。つまり自分自身が頭から一口で丸飲みされてしまうというのだ。この辺が非常に恐ろしい設定である。

 この妖怪は、人さまの最期の様子を面白おかしくネタにした人間の行為を許さない、まじめな存在だといえよう。人間が最も尊敬されるべき最期の瞬間をバカにすることは最も罪が重いとされるのであろうか。

 この妖怪のことを初めて聞いた時、昭和時代の妖怪子供本の決定版「いちばんくわしい日本妖怪図鑑」(ジャガーバックス)に掲載されていた妖怪「鬼一口」を思い出してしまう。この妖怪は平安時代に現れた妖怪であり、一陣の風と共に現れ、美しい女性を一口で食べてしまうという巨大な鬼の妖怪である。

 やはり亡くなってしまった人をとやかく言うことは、いけないことなのであろうか。鬼の一種であり、巨人の一種であると言われると何となく理解ができるような気がする。