【渡辺ありさの界隈ウォッチ】最終回となる今回は「陰謀論界隈」をお届けします。昨今のSNSでは、出どころの怪しい情報が、あたかも真実のように拡散されることが少なくありません。それはただの噂話にとどまらず、現実社会にネガティブな影響を与えることも。愉快なオカルトネタを面白おかしく報じてきた東スポとして、この状況を見過ごすわけにはいかない!…ということで、陰謀論ウオッチャーの黒猫ドラネコ氏に、陰謀論界隈の現状について取材しました。

――そもそも陰謀論とは

 黒猫 自分たちを陥れようとする大きな陰謀が、社会の裏でうごめいているのではないか――という、根拠の薄いネット上の噂話です。最近はそこに外国人差別やマイノリティーへの攻撃などが加わり、さらにタチが悪くなっている印象です。

――陰謀論界隈はどのように形成される?

 黒猫 陰謀論にもジャンルがあって反ワクチン系、Qアノン系、政治思想系などに枝分かれしていますが、その中でお互いの投稿を拡散し合うなどして広く浅くつながっています。ただし、陰謀論にハマっている当人は、自分たちを「陰謀論界隈」だとは気付いていません。怪しい情報にいいねを押したりリポストしたりした結果、SNSのアルゴリズムにより陰謀論だらけのタイムラインができ上がり、徐々に界隈にのみ込まれていくのです。

――陰謀論はなぜ広まる

 黒猫 陰謀論界隈のインフルエンサー的な人が、インプレッションを稼ぐ目的で意図的に刺激の強い情報を流し、拡散されていくことが多いです。最近は左翼叩きがはやっているので、それに乗じて切り抜き動画などを作り、収益を得る人も増えています。

――陰謀論にだまされる人の特徴は

 黒猫 困窮していたり、何かしらの悩みがある人は多いと思います。そういう時に「貧困はすべて財務省のせい」「生活苦は外国人のせい」など、自分に都合のいい情報が目に入ると飛びつきたくなる気持ちも分かります。ただ、その規模が大きくなり、実社会にも影響を及ぼし始めている。陰謀論が選挙などに混乱を与えないよう、対策を講じる必要がありますね。

――もし家族が陰謀論にハマったら

 黒猫 まずはどんな陰謀論を信じているのか確認し、情報を精査した上で、根気強く「違うんじゃないか」と問い続け、当事者が自ら気付くのを待つことが大切です。見放して孤立させると、かえって陰謀論にのめり込んでしまうこともあるので。

――信じると危険な陰謀論は

 黒猫 衝撃的な事件が起こると「あの地域はレプティリアンの巣だから」と言い出す陰謀論者がいます。レプティリアンとは人間に化けた爬虫類(トカゲ)型宇宙人で、人類を奴隷化することを目的に社会を裏から操っているとされています。

――荒唐無稽な話だ

 黒猫 陰謀論界隈は小さな点と点を無理やり結び付け、そこに“真実”を見いだします。人間の想像力は豊かなので、無限に妄想を広げてしまうのです。

――面白い陰謀論はある?

 黒猫「江戸時代は存在しない」という説を聞いたことはありませんか?「マッドフラット」という陰謀論があり、実は200年前に泥の洪水が起こって人類は一度滅亡しているため、江戸時代は嘘で、私たちは偽の歴史を学ばされているという話です。あと有名なのは「ゴム人間」陰謀論。バイデン前大統領が来日した時、イメージよりもガタイが良かったので、界隈では「あれはトランプがバイデンのゴムマスクをかぶっているに違いない」という噂が流れました。

ヴォジャノーイ2022年6月10日付本紙
ヴォジャノーイ2022年6月10日付本紙

――東スポっぽい

 黒猫 でも、東スポはニュースとオカルトを分けて報道しますよね。政治面で「バイデンはゴム人間だ」と書くことはない。これがSNSの陰謀論界隈と、新聞媒体との違いだと思います。

――新生活、陰謀論にだまされないためには

 黒猫 まず、ネット上に真実はそんなにありません。新生活で壁にぶち当たることもあるかもしれませんが、自分のつらさを不確かなもののせいにするのは、ただの現実逃避です。また、陰謀論は、信じるよりも信じる人を観察するほうが楽しい界隈です。もし陰謀論界隈に興味を持ったら、ウオッチャー側に回ることをおすすめします。

☆くろねこ・どらねこ ライター、漫画原作者。4月17日に新刊「参政党と大陰謀論時代」(文春新書)発売。購読者2万7000人超のニュースレター「トンデモ観察記」でも記事を定期配信中。「X」は【@kurodoraneko15】。