ソフトバンクの復活は、この男の顔を見なければ語ることはできない。本紙専属評論家の伊原春樹氏が4年ぶりにホークスの宮崎キャンプを訪問。新天地で汗にまみれる山川穂高内野手(32)を直撃した。女性問題に端を発する長期謹慎、FA移籍を巡っての大騒動…。何を思い、新たなユニホームに袖を通したのか。西武新人時代の監督である師が、率直な疑問と熱い思いを大砲にぶつけた。

伊原氏(右)とガッチリ握手を交わす“アグー”こと山川
伊原氏(右)とガッチリ握手を交わす“アグー”こと山川

【新鬼の手帳・伊原春樹】私が今年のホークスキャンプを訪問先に選んだ理由は、小久保新監督のビジョンを聞きたいのはもちろんだが、山川にどうしても直接会って確かめたいことがあったのも大きかった。

 常識的に考えれば、あれだけ球界内外に大迷惑をかけたのだ。今季に限っては西武に残って“みそぎのシーズン”を過ごすことが、彼にとってベストな道と考えていた。しかし、それでも彼は西武を出た。ファンや多くの人から冷や水を浴びせられることは重々理解していたはずだ。では、なぜ…。

 小久保監督と並んでグラウンドの守備練習を見守りながら、私の視線は山川へ向いていた。存在感はやはり抜群だが、どこか控えめで、まだ輪の中心にはいない。シートノックを終えると、彼は巨体を揺らして私の元へ駆け寄ってきた。

「アグー! 元気か」。あいさつと握手もそこそこに気になっていた疑問と思いをぶつける。西武からは残ってほしいという思いを感じられたのか。むしろ「出て行ってくれ」という空気ではなかったか。西武の減額提示とソフトバンクの増額条件の差もきっと開きがあったんだろ?

 山川に明確な答えを求めていたわけではない。彼は私の問いにどこか安堵したような笑みを浮かべ、時に小さくうなずいていただけだ。それでも、私は彼のその表情が見られただけで満足した。最後は「今年は“放牧”になるなよ!」という私なりのハッパに「ハイッ!」と元気な返事があった。直接会い、顔を見て、はっきりと「燃えている」と確信した。

 自身が右スラッガーの小久保監督も、山川については「モノが違いますね」と期待の大きさがうかがえた。これはもう開幕4番で決まりだろう。前後を支える柳田、近藤ら巧打者はそろっている。周東を1番との構想もあるようだ。“軸”さえ決まれば、得点力十分の打線になる。

 私が2度目の西武監督を務めた2014年のルーキーで、山川と同期の森友哉も先輩の復活を確信していた。同じ日の午後にオリックスキャンプへ足を向け「おい、アグーと会ってきたぞ」と水を向けると、森は「見ていてください。山川さん、今年はめちゃくちゃ打ちますから」と断言した。長く同じ釜の飯を食い、西武を出た仲間だから分かる思いもあるのだろう。

 昨季はソフトバンク・近藤ら3選手が26本で本塁打王に並んだが、故障さえなければ山川が断トツでタイトルを奪い返すはずだ。モイネロを先発へ回し、ローテーションも充実。4年ぶりの覇権奪回へ、戦力は整ったとみる。

 ちなみに私が山川をアグーと呼ぶのは、彼が入団時に「アグーと呼んでください!」と自ら願い出たことにちなむ。それ以来、親しみを込めてそう呼ばせてもらっている。ただあの年はキャンプ数日で肉離れを起こし、二軍へ「放牧」となってしまったのだが…。今年は最後までどっしりと4番を務め上げることを期待している。
 (本紙専属評論家)