孫正義オーナー(66)率いるソフトバンクには大きな宿題がある。それは「王イズムの継承」だ。
チームは今、転換期を迎えている。新シーズンからは王貞治球団会長(83)が厳しい指導で薫陶を授けた小久保裕紀監督(52)が一軍で指揮を執る。また、城島球団会長付特別アドバイザー(47)がシニアコーディネーターを兼務し、ファーム部門を統括する立場で未来の主力育成に本腰を入れる。王会長が球団の要請で昨年まで担っていた「特別チームアドバイザー」の肩書も、これらの動きに伴って外れるとみられる。その流れには明確な意図があるはずだ。
世界的企業をけん引する総帥・孫オーナーは、生存競争が激しいビジネスの世界を主戦場とするだけに、勝ち負けには人一倍厳しい。その厳しさは、グラウンド上のそれをしのぐという声も漏れ伝わってくるほど。世界中を見渡しても孫オーナーが心酔する人物は数少ないが、その一人が王会長だった。
通算868本塁打、巨人V9の立役者、初代WBC世界一監督…。野球の華であるホームランを誰よりも打ち、勝ち続けてきた男だ。2人はタッグを組み、これまでに確かな栄光を手にしてきた。
ビジネスの最前線で世界に先駆け「時代の最先端」を創出し続けてきた孫オーナー。人工知能や最新テクノロジーが席巻する時代に「王イズム」の継承を強く求める背景には、絶対的な価値が存在するからだろう。
一流の仕事として、大きな使命が「人を残す」ことと言われる。ちまたでは、球団の〝最終決裁者〟が王会長という見方がいまだに根強いが、人を残すという観点に立ち、スタンスはもう何年も前から徐々に変わってきている。フロント業務、現場の方針両面で「責任者に任せる」「見守る」という動きが顕著だ。
功あるリーダーが率いてきた強大な組織ほど後継者の育成はより難題となる。「孫オーナーも王会長も、失敗を恐れない積極果敢なチャレンジを好まれる」(ソフトバンクグループ本社関係者)。チームは西武からFA加入した山川の人的補償を巡って情報が錯綜したこともあり、強い逆風の最中だ。世間の厳しい目にもさらされる中で、宿題をクリアできるか――。












