〝日本の至宝〟はどこに向かうべきか。元日本代表FW武田修宏氏(56=本紙評論家)とスペイン1部レアル・ソシエダードMF久保建英(22)をFC東京時代に指導した中村忠氏(52=現東京Vアカデミー・オブ・ヘッド・コーチング)が対談し、欧州ビッグクラブ移籍について議論した。12日開幕のアジアカップ(カタール)に臨む久保には多くのイングランド勢が獲得への興味を抱いていることに2人が出した結論とは――。(全3回の3回目)

 武田氏(以下武田)昔と今で、アカデミーの選手の違いはある? 頑張れない選手が多いって聞くけど、時代の変化もあるんだろうけど、どう感じて、どう対応している?

 中村氏(以下中村)最近の子は「オレがオレが」ってタイプは少ないです。良く言えば協調性がある。悪く言えば熱量が少ない。それでもヴェルディ育ちの選手は熱量は多い方かな。それと内に秘める選手もいるので、アカデミーの指導者としてそれをどう引き出すかが求められています。

 武田 最近は時代とともにいい選手が少なくなっていると聞くけど、実際はどうかな。

 中村 昔は運動神経のいい子がサッカーをやるっていうのがあったけど、今は体育の成績が良くないけど、サッカーだけはうまいという子が増えてますね。身体能力がすごい子は、サッカーだけでなくいろんな競技に取り組んでいる感じ。でもいい選手はいますよ。

 武田、ミニラ(中村の愛称)は現役時代に(MFドラガン)ストイコビッチをマンマークするタイプの選手だったな。ガツガツとね。(元イタリア代表MFジェンローナ)ガットゥーゾみたいな役割だったけど、中学、高校時代の久保選手に守備を教えてないの?

 中村 教えることはなかったですね。それに、そういうタイプは今(日本代表MF)遠藤航(リバプール)がいますよ。守備ができた上、ゴールにも絡める選手が出てきていて、日本サッカーは進化してますよ。

 武田 そう言えば久保選手には移籍話も出ている。イングランドのチームが狙っているとか。プレミアのサッカーはスペインとまったく違う。スペインはどっちかというと、攻撃でやり合うけど、イングランドは、攻守に激しく、今よりもハードワークしないといけない。スタイルが異なる。久保はスペインで合ってるような気がするね。

 中村 そうですね。試合を見ていて「慣れているな」というのも感じますし、だからタケフサはスペインで活躍できていると思いますね。

 武田 スペイン語も難なく話せるし、移籍して一つのスタイルを確立したからね。サイドから中にいくって。今はやることが整理されて自信を持ってやれている。ただ監督が代わると、日本人だからって使われない可能性もゼロじゃない。それにスペインにはEU圏外枠の問題もある。移籍するにしても、どう見極めるのか。まあ、久保選手ならイングランドでも対応するだろうね。

 中村 確かにスペインがベストでしょう。でもタケフサならば、どこのリーグに行ってもアジャストできる。それも見てみたい。環境に適応する能力はあるので。

 武田 FC東京時代に久保選手を指導していたから、周りから「第2の久保を育ててほしい」とか言われているだろ?

 中村 僕は全然育ててないので(笑い)。タケフサには自由にやらせて僕は見ていただけ。育てたとかはないですよ。

 武田 遠藤みたいなチームの黒子役になれる選手を育ててほしいな。日本サッカーのため、本当に必要なのはストライカーと汗かき屋だから。そういうタイプを育てるのは得意だろ? それと今後の夢なんだよ。

 中村 今後については現在模索中です。選手を育てるのも楽しいし、トップの監督も考えないわけではない。どうしようかと考えています。

 武田 トップの監督は結果がすべてだからな。勝てばいいけど、負ければ責任を負わないといけない。だけどアカデミーの指導者は目の前の結果よりも、いかに良い選手をトップチームに送り込むか。すぐに成果は出ないけど、どちらも責任のある仕事だぞ。

 中村 たまには良いこといいますね。武田さんも現場に戻って、いいストライカーを育ててくださいよ。

(終わり)