【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】クラブハウスで初めてショーン・マナイアを見かけた時、ディズニーの映画「モアナ」に出てくる半神「マウイ」を連想した。クリクリでふわふわのボリュームある髪形のインパクトがハンパないのだ。そこに民族的なタトゥー。
「腕のタトゥー、『タタオ』はサモア人が何千年も受け継いできた伝統デザイン。幼いころに見て、かっこいいなと、ずっとあこがれていたものをドラフトで得たお金で、ようやく両親を連れてサモアに行ったときに入れたんだ」
誇らしそうに腕を見せながら話してくれたショーン。模様にはそれぞれ「知識」「力」などの意味が込められているが、彼にとってはそれ以上の意味がある。
「父がアメリカ領サモア出身で、軍隊に入りベトナム戦争を戦った後、インディアナ州の基地に駐屯したんだ。そこで白人の母と出会って、兄と僕が生まれたんだけど、住んでいたのが人口1000人の信号が一つしかないような小さな町。父の出身であるサモアとはほとんど接点がなかったし、お金もなかったからサモアに行くこともできなかった」
あったのは4~5歳の時に父がハワイのポリネシア文化センターからもらってきたビデオテープのみ。
「観光向けのビデオなんだけど、サモア、フィジー、トンガなどのセクションに分かれていて、民族衣装を着て、工芸やダンスを紹介してくれて…僕はすごく魅了されて、数年間にわたりそのビデオを1日2回は見ていたのを覚えている。それがサモアとの唯一のつながりだったから」
正直、サモアについて、ショーンと話すまでほとんど知らなかったのだが、驚いたことに、米領サモアの方は、米国のパスポートは持てても米国の市民権は得られず、人口約4万6000人の半数が貧困家庭にあたるため、家族を支えるため米軍への志願率が800以上ある全米の基地の中で最も多いという。ショーンの父ファーロロイさんもそうやって母国を後にした一人だ。
「野球でプロ入りして契約金をもらった時に真っ先にしたいと思ったのが、サモアに行くことだった。両親とシカゴからロサンゼルス、ロサンゼルスからハワイ、ハワイから首都パンゴパンゴと、飛行機だけで一人数千ドルかかる気が遠くなりそうな長旅だったけど、初めて従兄弟と会ったり、父の通っていた学校を見られたり、本当に美しい国で、感無量だった。着いた日は夜だったんだけど、そもそも飛行機が週に2回しか飛んでいないとかで、サモアの人たちにとっては、家族との再会や旅立ちへの見送りなど、空港は大ごとなんだって。いろんな人がハグする様子がやたら印象に残っているんだ」
タトゥーもまた、サモア人にとっては誇りを表すものであり、一人前として認められるための儀式の一つ。ショーンは代々受け継がれてきた伝統的な手法でサモア人の職人に初めてのタトゥーを入れてもらったそうだ。
「2014年に行ってから戻っていないんだけど、もしかしたら今オフ、野球のクリニックを開催しに行けるかもしれないんだ。サモアにも野球場はあるんだよ。少しでも何かの形で助けられたらいいなと思っている」
ものすごく余談なのだが「モアナ」に出てくる「マウイ」は、その声役を務めたドウェイン・ジョンソンの祖父ピーター・メイビア氏がモデルとなっているらしい。米領サモア出身のプロレスラーだ。ちょっとうれしい発見だった。
☆ショーン・マナイア 1992年2月1日生まれ。31歳。米国インディアナ州出身。195センチ、111キロ。左投げ左打ちの投手。2013年のMLBドラフト1巡目(全体34位)でロイヤルズから指名されてプロ入り。15年にアスレチックスへ移籍すると、16年にメジャーデビュー。同年25試合に登板し、先発24試合で7勝9敗、防御率3・86の成績を残した。17年は12勝(10敗)。18年にはレッドソックス戦でノーヒットノーランを達成するなど12勝(9敗)をマークした。22年にパドレスへ移籍、23年はSFジャイアンツでプレーしている。












