第105回全国高校野球選手権の第8日第2試合は徳島商が智弁学園(奈良)の猛打の前に6―12で散った。
18安打を浴びながらも155球を1人で投げたエース森煌誠(3年)は試合後「自分を信じて投げさせてくれた森影先生(監督)に感謝したい。エラーがありながらも点を取ってくれてありがたかった。甲子園まで連れてきてくれた仲間に感謝したい」と声を詰まらせた。県大会5試合と愛工大名電(愛知)との初戦を1人で投げ切り、最後に力尽きた。
部員数57人だが、森影監督の方針で基本的にオーダーは固定。この日も選手交代がないままに試合が進んだ。7点差で迎えた9回、無死一塁の場面で7番・森煌に代打・市川(3年)が告げられ、市川は見事に左前打を放ってチャンスを広げ、得点につなげている。
この代打は森煌が森影監督にお願いしたものだった。指揮官の「森、どうする?」の問いかけに「自分は打てないと思うんで代打を送ってください」と答えたと言う。「自分から代えてもらいました。あきらめているわけではないけど、控えの選手に甲子園の土を踏んでもらいたかった。代わってからみんながつないでくれて盛り上がったのでうれしかった。自分が抑えられず、次の投手に回すことができなくて残念です」と明かした。
チームメートのことを思った行動だったが、森影監督は複雑だった。「打たせてほしいと言ってほしかった。逆転しますという気持ちでね。ケガをしない限り森を代えるつもりはまったくなかった。公立高校は(投手を)3枚、4枚とそんな贅沢は言えませんので、絶対無理と思う。ウチは入れ替わり立ち代わり活躍できる選手層ではない。育ててはいるけど、難しい。それでも勝っていくチームを作りたい。固定できているだけ今年はよかった。(控えを使って)選手層が落ちるんだったら負けに走るということ」と持論を語った。ブルペンには準備する選手もいたが、あくまでケガなどの有事に備えてのことだったという。
昨今の高校野球は投手の負担や健康面から球数制限を儲け、複数投手を育成する傾向にあるが、公立高校には難しい現状もある。ある選手は「それだけ選手を信頼してくれているということ。控え選手の思いも背負って僕らはやっている」と責任感を口にする。森煌はそんな現状と監督の方針を理解したうえで、控え選手を気遣い、進言した。その思いに嘘はない。










