終着点はどこに――。テニスの4大大会「全仏オープン」の混合ダブルス決勝が8日に行われ、失格騒動に揺れる加藤未唯(28=ザイマックス)とティム・プッツ(ドイツ)のペアが、ビアンカ・アンドレースク(カナダ)、マイケル・ビーナス(ニュージーランド)組を4―6、6―4からのマッチタイブレークを10―6で制し優勝した。女子ダブルスでの加藤組の失格はテニス界で波紋を広げ続けており、今後は4大大会の改革議論にまで発展しそうだ。
涙の劇的Vだ。第1セットこそ落としたが、その後は加藤の気迫あふれるプレーで流れを変えて2セットを連取。鮮やかな逆転劇で頂点に立った。日本人選手としては昨年の柴原瑛菜(橋本総業)に続き、2年連続での快挙達成となった。優勝スピーチでは涙を流しながら「精神的にここ数日、特に大変だった。女子ダブルスからいろいろなことがあった」と悲痛な思いを吐露した。
加藤はアルディラ・スーチャディ(インドネシア)と組んだ女子ダブルス3回戦で、相手コートへの返球がボールガールに直撃。審判はいったん警告を発したが、対戦相手のマリエ・ブズコバ(チェコ)とサラ・ソリベストルモ(スペイン)組が執拗に抗議した結果、裁定が覆って失格の厳罰処分が下された。
この失格処分が、テニス界を揺るがす大騒動となった。加藤は裁定について提訴し、プロテニス選手協会(PTPA)も処分不当とする緊急声明を発表。新旧のスター選手たちが加藤を擁護する一方で、裁定の変更を求めたブズコバとソリベストルモに対しては選手やファンから非難が殺到するなど世界中が注目する問題となった。
そうした騒動の渦中で果たした全仏Vの快挙に、会場からは拍手喝采。加藤は喜びを語った後、こう続けた。「最後にローランギャロス(全仏の愛称)へ、失格は残念だったが、私の訴えに対して良い結果が出て、私のポイントと賞金が戻されることを願っている」と改めて強く訴えたのだ。
加藤の毅然とした行動は、テニス界全体を動かそうとしている。大会を主催する全仏に対する批判が高まる中、インドネシアメディア「スポーツ・オケゾーン」によると、同国テニス協会の国際関係担当者ゴファル・イスマイル氏も激怒。「この罰はあまりにもやりすぎだ。両選手にとって非常に有害だ」と強く糾弾し、全仏側の対応を問題視した。
またフランス放送局「RMC」は以前に大会ディレクターとして全仏の要職にいたギー・フォルジェ氏の見解を報道。今回の失格問題を「極めてひどいものだ」と一刀両断し、加藤の失格を決断したレフェリーが、2020年全米オープンでのケースに言及した点も「数年前の(ノバク)ジョコビッチの件とはまったく違う」と批判した。地元の重鎮による言葉は重く、全仏への風当たりがさらに強まることは避けられない。
さらに事態は4大大会全体にも波及しそうだ。フランスのスター選手であるアリーゼ・コルネ(33)は、今回の問題を解決するために「ビデオ判定による異議申し立ての制定を」と訴えて、テニス界から賛同の声が続出している。加藤問題が契機となり、ルール変更が議論される風向きとなってきたのだ。
騒動の発端は加藤が原因だったことは間違いないが〝悲劇のヒロイン〟となったことで、一躍テニス界で脚光を浴びる存在になっている。










