投降には母親の機転があった。長野県中野市で25日に発生した猟銃立てこもり事件で28日、青木政憲容疑者(31)が送検された。今回のように銃を所持した立てこもり事件の場合は自殺で終わるケースがあるが、そうならなかったのには理由があった。

 青木容疑者は25日夕方、一方的に恨んでいた可能性がある村上幸枝さんと竹内靖子さんを刃物で襲撃。さらに通報で駆けつけた中野署の玉井良樹警部補と池内卓夫巡査部長の乗ったパトカーに猟銃を発砲した。4人を殺害した後、別の警察官にも猟銃を向けていたが、発砲はせずに、自宅に立てこもった。青木容疑者は中野市議会議長の青木正道氏の長男だった。

 青木容疑者が投降したのは翌26日午前4時半ごろだった。警察関係者は「銃を所持している立てこもり犯の場合、最後は自殺してしまうケースが多い。おそらく長野県警もそこを警戒していたはずです」と指摘した。

 2007年に東京・町田で起きた拳銃立てこもり事件では犯人が自殺を図っていた。08年には埼玉・川越で拳銃を持った男が車内に立てこもる事件があったが、最後は自殺。17年には福岡県北九州市で猟銃で犬を撃った男が立てこもる事件が起き、やはり自殺していた。

 今回の事件でそうならなかったのには母親の機転があった。NHKや信濃毎日新聞などによると、籠城中の自宅では青木容疑者の母親が説得をしており、その際に青木容疑者は「ぼっちとバカにされた」と動機を話していたという。

 また、自分のしたことが死刑になりうることだとは理解していたようで、「絞首刑は一気に死ねないから嫌だ」と出頭を拒否。猟銃で自殺を試みたが失敗したという。25日午後8時ごろに現場では銃声が鳴っていたが、これは青木容疑者が猟銃で自殺を図ったときのものだったという。その後に母親が「私が撃ってあげる」と話し、青木容疑者から猟銃を受け取り、猟銃を持ったまま自宅を抜け出したという。

 犯人が死んでしまえば真相は闇の中になってしまう。母親の機転で犯人死亡の結末は避けることができたのだ。ネットでは「母ちゃんすごいな」「両親はちゃんとした人だったんだろうな」「切ないなあ」と親子のやりとりに衝撃を受けている人が多い。

 青木容疑者の母親はフラワーアレンジメントやフルーツカッティングの講座を開くなどしていたという。また、正道氏が立ち上げたジェラート店にも力を入れていた。
 少なくとも青木容疑者の周りには家族がいて“ぼっち”のようには見えないが…。