長野県中野市の議会事務局は26日、殺人容疑で逮捕された青木政憲容疑者(31)の父で市議会議長を務める正道氏(57)が議員辞職したと発表した。26日午前に辞職願を市役所の文書受けに入れ、午後に許可された。

 地元住民らによると、青木容疑者は小中高学時代は活発な野球少年だったというが、県内の大学に進学後に中退し、地元に戻ってきた。そのころには「まったくしゃべらない」「引きこもり状態」と言われるほどで、家族以外とはほとんどコミュニケーションを取らなかったようだ。

 青木容疑者は約10年前に農園を引き継ぎ、「マサノリ園」(アグリサポート株式会社)を経営していた。2019年からアグリサポートがジェラート店を運営し、大成功し、地元メディアにも取り上げられたほど順調だった。中野市の「ふるさと納税返礼品」に採用された。

 ジェラート店のホームページ(現在削除)では「中野市で13代続く農園が私たちマサノリ園です。ブドウを中心にリンゴやプラム、モモなどを家族一丸となって精算しています。マサノリ園のこだわりは大きく分けて『土づくり』『植物にストレスをかけない栽培』『樹上完熟』の3点。こうした長い経験に裏付けられた取り組みを通じて収穫した旬の果実を用い、多くの方々にフルーツそのもののおいしさを味わってもらえるジェラートづくりに取り組んでいます」と書いている。

 実際は正道氏が奮闘していたようだ。長野県産業振興機構のホームページでは「支援活用実例」として、マサノリ園のジェラートの成功ぶりを取り上げた。マサノリ園の園主は青木容疑者だが、代表者は正道氏。ジェラート店のインスタグラムにアップされていた画像にも正道氏が登場し、フロントマンをやっていたことがうかがえる。

 地元関係者は「引きこもりがちだった青木容疑者が昨年、ようやく自ら新規事業をやろうと動いたようですが、うまくいかなかったようです」と言う。

 市議会議長ともなれば、有権者からの陳情がひっきりなしだっただろう。そんな中、引き継がせたはずのマサノリ園を支えた。正道氏の妻=青木容疑者の母親もプリザーブドフラワーの講師をやりつつ、ジェラート店に力を入れていたという。