【柏原純一「烈眼」】阪神の和製大砲・佐藤輝明(24)の力強い姿を存分に見ることができた。14日のDeNA戦(甲子園)で自己最多の7打点。1本目は平良の低めスライダーを捉えて6号先制3ラン、2本目は5―4と勝ち越した直後の4回二死満塁で三嶋の初球146キロを完璧に仕留め、右翼席へと突き刺した。いずれも〝値千金〟の一撃で、文字通り自らのバットでチームを勝利に導いた。

 開幕直後はスタメンも外れるほどの低空飛行だったが、4月下旬ぐらいから感覚をつかみ、12日からの今カードでは計3発9打点。試行錯誤の段階から一歩進む形で、確実な手応えを得たことだろう。

 もともと引き手の右手の使い方はうまい打者。四球後の初球を狙い打ちした2本目も見事だったが、状態の良さを示したのはむしろ内角低めへのスライダーを捉えた1本目だ。右半身の〝壁〟が崩れることなく、自然な形で振り抜けていた。

 変わったのは何か。ネット裏から視線を送ると明らかに違うのが、打席での立ち姿。すなわち「構え」だ。1か月前とは比べものにならないほどゆったりとした自然体で構えられており、ネクストで素振りをする姿からも〝雰囲気〟が感じられる。

 もう一つ。これまで〝常に〟ではなかった所作も目についた。打席に入る直前のルーティンだ。

 すべての打席で一塁線へと歩を進め、スイングを行ってから〝本番〟のボックスへと向かった。2発放った後の7回の5打席目では、ネクストから一度、打席に入りかけた後、すぐに外し、一塁線でスイングをし直してから、改めて打席へ向かった。今の佐藤輝にはとても大事な確認作業なのだと確信した。

 ピンときた人も多いと思うが、この所作はヤクルトの3冠王・村上宗隆も、打席へ向かう際、必ず行っている。この〝直前素振り〟で確かめているのは、おそらく軸が投手寄りに傾くことなく、ブレのないスイングができているかどうか。構えたところから一直線でヘッドが走るイメージで、体重移動しながら一塁線を実際の打席のラインに見たてることで、バットの角度など意識レベルの確認を行うことができる。

 何でも3冠打者のマネをすれば…というわけではないが、この模倣は大いに賛同できる。それだけ一打席一打席を大事に重ねていこうとする姿勢の表れでもあるからだ。

 あとは際どいコースのボール球の見極め。誰でも雑になれば、バッティングはすぐに崩れる。試合展開に左右されることなく、今後も丁寧なアプローチを続けていくことを期待したい。(野球評論家)