第5回WBC決勝・米国戦(マイアミ)を3―2で制した日本代表は3大会、14年ぶりの世界一を達成した。今大会の侍ジャパンで一番の〝大ヒット〟と言えば、現役メジャーリーガーとして米国から〝逆輸入〟し、代表デビューしたラーズ・ヌートバー外野手(25=カージナルス)だろう。

 シュアな打撃と堅実な守備力で「1番・中堅」に定着した。明るい性格と好守でのハッスルプレーは、日本人のハートをガッチリとつかみ「粘り強く」とチームを鼓舞することを目的に、出塁時にコショウを振りかける動作を繰り出す「ペッパーミル・パフォーマンス」は〝社会現象〟に。本来は食卓で使用する容器が全国で売り切れになるなど大ブームも巻き起こした。

 今大会からWBCの大会規定の変更により、本人が日本国籍を持っていなくとも、父母のどちらかが日本人であれば出場可能に。これによりヌートバーの代表入りが実現したのだが、実は昨秋の選考段階ではヌートバーは〝候補〟の2番手。昨季、ガーディアンズで147試合、打率2割9分8厘をマークしたスティーブン・クワン外野手(25)が大本命だった。

 ところが昨年末に主催のWBCI(ワールド・ベースボール・クラシック・インク)が、国籍における代表出場資格の範囲を「該当選手の父母まで」としたため、祖父母が日本人のクワンの選出はご破算に。そこで昨季MLBで108試合、打率2割2分8厘のヌートバーに落ち着いた経緯がある。

 当時、選考に関わった首脳陣は「そりゃ、数字がいいほうに来てほしいに決まっている。実際に見たことない選手でも、ある程度は使わなければいけないだろうから…」と話していたほど。「日本語はほとんど無理」「仮に打てなくても使い続けるの?」「サインプレーとか他の野手との連係は大丈夫?」。2月の宮崎合宿に合流できないと判明したころは〝不安〟はピークに達していた。

 栗山監督も含め、プレーを見てみるまで戦力になるか否か、誰も確信を持てなかったヌートバーの〝実力〟は周知の通り。当初、外野手のリーダーとして、計算に入れていた鈴木誠也(カブス)が直前の故障で出場断念となったこともあり「救世主だよ。日本代表に来てくれて『本当にありがとう』という言葉しかない」(侍首脳陣)と、拝み倒すほどにまでなっていた。

 栗山ジャパンの世界一達成の立役者が大谷なら、影のMVPは〝たっちゃん〟の愛称で親しまれたヌートバーで決まりだ。