新日本プロレス22日の名古屋大会で、「ユナイテッドエンパイア」のグレート―O―カーンが、KOPW保持者・鷹木信悟(40)との「異種格闘技マッチ」に目も当てられない大惨敗を喫した。

 この日の争奪戦は、オーカーン提案のルールが採用された。勝敗を決めるのはKO、TKO、タップアウトのみで、道着着用の場合は道着を使用した締め技も有効の「異種格闘技マッチ」だ。だが、そもそも「異種格闘技戦」とは、異なる格闘競技者同士が何らかのルールの下で対戦することを意味する。プロレスラー同士でその呼称を用いるオーカーンは、やはり無知で救いようがない。

 ともに道着を着用して臨んだ一戦は、序盤から緊迫感あふれるグラウンドの攻防が続く。しかしオーカーンは、上等な料理にハチミツをブチまけるがごとき思想の持ち主。道着の帯を使って鷹木の首を絞める反則行為に加え、エンパイアのセコンドまで介入させて場内から大ブーイングを浴びる。

 それでも勝てないのだからこれはもう悲劇だ。オーカーンは執拗にスリーパーホールドを狙うがそのたびに切り返され、ラスト・オブ・ザ・ドラゴンでマットに叩きつけられる。ダブルダウンから先に立ち上がった鷹木のスライディングエルボーを浴びると、最後は片羽絞めに失神してTKO負け。気の毒すぎてとてもツッコめねェよ。プロレスセンス、格闘センス、ハツラツさ、独身男性としての自立力すべてにおいて完敗だった。

 自立力で思い出したが、実は団体内ではオーカーンに新たな汚名が誕生していた。それは昨年末の新日本道場の大掃除のことだ。ヤングライオンたちがせわしなく働いているところに、どこからともなくオーカーンが姿を現し、道場内を物色。大量のおしぼり、持ち主不明の衣類、さらには賞味期限切れの食料品などを大量に持ち帰っていったというから、あさましいにもほどがある。

 不用品だけならともかく、その日の食材も勝手に持ち帰られたことで、後輩のヤングライオンたちもさすがに憤慨。彼らから裏で「物乞いニキ」と呼ばれていることを、オーカーンは知る由もないのがまた哀れだ。

 穴があったら入りたいはずの醜態をさらしたにもかかわらず、のうのうとバックステージに登場したオーカーンは「クソーッ! なんで異種格闘技で…エンパイアをセコンドにつけて勝てない! こんな…こんな惨めな…。だからプロレスなんか大っ嫌いなんだ!」と逆ギレ。

「はいはいはい、プロレス最高、プロレス最強。おめでとう、おめでとう。こんなもんでよ、ベルトかけてよ、ベルトがかかってるだけでよ…。いいか、覚えておけ! 史上初、プロレス嫌いの余がベルトなんかよりもな、メダルなんかよりも、命削って戦ってる余の方が、価値があるって示してやるよ」と開き直ったが、価値があるとすれば賞味期限切れのものを食べても壊れない胃腸の強さだけだ。

 ところで先ほど、プロレスラー同士で戦ってどこが「異種格闘技マッチ」なのかと問題提起したが、その謎はこの支離滅裂なコメントを見て解決した。つまるところこの日の試合は、真のプロレスラーである鷹木と、レスラー崩れの素人・オーカーンによる〝異種〟格闘技マッチだったと結論付けても過言ではない気がする。