米大リーグのMVPが17日(日本時間18日)に発表され、ア・リーグはヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(30)が初受賞した。昨季は満票受賞だったエンゼルスの大谷翔平投手(28)は、130ポイント差の次点となり、2年連続の偉業はならなかったが…。米大手メディアのコラムニストが、今回の〝舞台裏〟を総括した。

 発表の瞬間、ジャッジは「言葉にならないよ。最高の瞬間だ。大変なハードワークを続けてここまでたどりついた」とコメント。最後までこの賞を争った大谷へ「彼はこの惑星上のベストプレーヤー。彼も素晴らしいシーズンを過ごしていたので、争うのが楽しかった」と敬意を表した。

 これに大谷は「MVPどうのこうのというよりも、毎日見ていました。また打ったな、また打ったなと。本当に楽しみというか、楽しませてもらった人間のひとりかなと思います」との賛辞でジャッジを祝福した。

 大谷に1位票を投じた記者2人がいずれもロサンゼルスの記者だったことが物議を醸しているが、結果的には今季、シーズン本塁打のア・リーグ記録(1961年ロジャー・マリスの61本塁打)を61年ぶりに塗り替える62本を放ち、131打点で2冠に輝いたジャッジの圧勝となった。

 さまざまな論点がある中で、米大手メディアのコラムニストは、匿名を条件に今年のMVP投票を「ジャッジの『62』という数字にメディアを含め、MLB全体が意味を与えようとしている。ステロイド時代の記録を消そうとしている」と声を潜めて総括した。

 これまで、マリスの記録(61本)を超えたシーズン本塁打記録は、メジャー記録であるボンズ(ジャイアンツ)の73本(2001年)を筆頭にマグワイア(カージナルス=70本・98年、65本・99年)、ソーサ(カブス=66本・98年、64本・01年、63本・99年)と計3人が、のべ6度達成している。

 しかし、98年~01年の4年間にいずれもナ・リーグで打ち立てられたこれらの記録は「ステロイド全盛時代の汚れた数字」として米メディアの中では〝参考記録扱い〟されている。実際、この3選手(ボンズ=通算762本、ソーサ=同609本、マグワイア=同583本)は球史に残る偉大な記録を残しながら、いまだ全米野球記者協会(BBWAA)の記者投票による野球殿堂入りを果たせていない。

 この〝汚れた記録〟を一掃し、同じヤンキースの選手によって61年ぶりに更新されたア・リーグの新記録を、新たな時代の象徴としたい「見えざる力」が働いていたという。

 前出コラムニストによると「3割打者の価値は100年前も今も変わらないが、本塁打の価値はステロイド使用によってボヤけてしまった」と米国での薬物使用問題の根の深さに言及した。

 一方で今回、投手として28試合(166回)に登板して15勝9敗、防御率2・33、219奪三振。打者としても157試合試合で打率2割7分3厘、34本塁打、95打点をマークし、メジャー史上初の「投打ダブル規定到達」を果たしながら後塵を拝した大谷には、こう言ってその偉業を称えた。

「今年も昨年以上に人間の理解を超えた活躍だったことは間違いない。時間が10年、30年、50年とたって大谷と同じレベルで投打二刀流をこなせた選手がいたかどうかが明白となった時、今シーズンの彼の価値は改めて評価されてくると思う。テッド・ウイリアムスが2度目の3冠王を獲りながら、MVPが優勝したヤンキースのディマジオとなった1947年と同じように、割を食った可能性は高い」

 いずれにしろ、ジャッジ、大谷とも今季の両雄の活躍はメジャー史に残る特筆すべきものだった。