【取材の裏側 現場ノート】球界イチのムードメーカーがユニホームを脱ぐ――。日本ハム・杉谷拳士内野手(31)が28日に札幌市内の球団事務所で会見を開き、今季限りでの現役引退を発表した。

 この日を迎えるにあたり「いろいろとシミュレーションはしてきたつもりあったんですけど」と予行演習をしてきたことを明かしつつ「今、座った時に色んな思いがこみ上げてきて、どう伝えていいのか、感謝の気持ちでいっぱいです」と率直な思いを明かした杉谷。引退の理由については「シーズンが終わってから、たくさんの方に相談して。自分の将来のことだったり、ファイターズの将来のこと、体のこと、総合的な判断をした上で、このような形になりました」と説明した。

 多くのファンに愛された男は、天性の〝コミュ力お化け〟でもあった。記者と杉谷の出会いは、日本ハム担当時代の2017年。当時入社1年目で右も左も分からなかった記者だが、どんなにくだらない質問にも真摯に対応してくれた杉谷。初対面の人間にも壁を作らないその明るさに驚かされたが、中でも印象的だったのは、杉谷の「相手の懐に飛び込むうまさ」だ。

 ある日の試合後、スマホアプリ「LINE」の使い方を記者に尋ねてきた杉谷。つたないながらもなんとか説明を終えると「ありがとう! あ、あとLINE教えてよ!」と、矢継ぎ早に記者の連絡先をまさかの〝逆オファー〟。本来は記者側から時間をかけて選手・関係者の連絡先を聞き出すのが一般的だが、杉谷は自ら「LINE交換」を提案してくれたのだから、新人時代の記者は驚かされた。

 その後も公私ともに親交を深めた。記者にとっては良き人生の先輩でもあった。記者が自らの結婚を報告した際には「マジで⁉ おめでとう! 俺、何する? 何でもするよ! あ、ビデオレター撮るよ!」と、こちらが頼む前にまたしても〝逆オファー〟。ユーモアたっぷりなビデオレターを贈ってくれたことで、結婚式当日は大盛況に終わった。

 持ち前の明るさで誰とでも仲良くなれてしまう男・杉谷拳士。生粋の「陽キャラ」は、第二の人生でも出会う人すべてが「友達」になってしまうに違いない。(2017年~2020年・日本ハム担当 現巨人担当・熊沢航平)