【広瀬真徳 球界こぼれ話】プロ野球も折り返し地点を過ぎた。新型コロナの新規感染者数は7月に入り増加傾向も、各球場には連日大勢のファンが詰めかけている。球界にとってこうした支持はありがたいこと。各球団にはこの状況におごることなくファンサービスを徹底してもらいたいが、このところ「ファンを軽視しているのでは?」と思える行為も散見される。

 例えば6月28日に西武の本拠地・ベルーナドームで行われた日本ハム戦でのこと。3回一死一塁の場面で西武・山川が左翼ポール際に大飛球を放ったのだが、左翼を守っていた日本ハム・近藤が打球を見失い思わず守備位置で立ち往生した。その光景を見た山川は即座に天井を指さしながら審判にアピールを始めた。どうやら「天井に打球が当たったのではないか」と確認を促したようだった。この判定を巡りプレーは一時中断。西武・辻監督もベンチを飛び出し審判団と協議したため数分間にわたり場内は騒然となった。その後打球は「ファウル」で決着がついたが、この中断や協議に関して審判団から観客への説明は一切なし。困惑するスタンドのファンをよそにプレーが再開されたのである。

 確かに打球をめぐり辻監督や日本ハム・新庄監督からリクエストが要求されたわけではない。審判団に「説明義務」はないのだろう。だが、現場の記者席から見た限り報道陣はもちろん、大半の来場者は何を協議しているのか把握できなかった。審判はせめて場内放送で説明する配慮があってもよかったのではないか。

 3日の西武対ソフトバンク戦でも2回に西武・栗山が打席中に突如球審に何やら抗議。辻監督らがベンチを出て審判団と協議をする場面があった。この時も数分間試合が中断したにもかかわらず淡々とプレーが再開された。中継テレビの実況や解説者ですら栗山が「何を抗議しているのか」を説明できない状況だった。試合後になってようやくソフトバンク先発・石川の投球テンポの速さを指摘していたことがわかったが、審判のこの対応。試合を観戦するファンに対して不親切と言わざるを得ない。

 近年の球界は試合時間短縮に向け、さまざまな取り組みが実践されている。無駄な時間を省く意味でも細かいプレーを逐一説明する必要はない。だが、スタンドで観戦するファンやテレビ視聴者が困惑するようなプレーに関しては説明を省略すべきではない。むしろ審判から抗議理由や中断経緯を丁寧に説明することこそがファンサービスだろう。

 球界全体で「ファンあってのプロ野球」を声高に叫ぶのであればファンを置き去りにする行為は早急に改善した方がいい。誰のために野球をやっているのか。審判を含め現場はいま一度考えるべきではないか。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。