【全仏オープンに挑むスターの現状(3)】テニスの4大大会、全仏オープン(パリ)がいよいよ22日に開幕。クレー(赤土)コート最高峰の戦いに挑むV候補にスポットを当てた連載のラストは男子世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(34=セルビア)。新型コロナウイルスのワクチン未接種問題を起こすなど〝お騒がせ〟ぶりが目立つが、DAZNテニス中継の解説者・佐藤武文氏はエンターテイナーとしての魅力を語ってくれた。

「ジョーコ、ジョコビッチ!」。全仏オープンの前哨戦イタリア国際(ローマ)、この地でしか聞けないコールが何度も鳴り響いた。

「ジョーコはイタリア語でゲーム。ジョコビッチがゲームを取るたびに発せられる独特のコールはまさに風物詩。いよいよこの時期がきた!ってコアなファンはワクワクするんです」(佐藤氏)

 全仏オープン直前の同大会で、ジョコビッチは史上5人目の通算1000勝を達成して優勝。世界1位の在位期間は歴代トップの370週に伸ばし、完全無欠の強さを見せつけた。佐藤氏は「序盤はもたついたけど準決勝、決勝は完璧な仕上がり。改めてピーキングのうまさを痛感しました」と絶賛。昨年の全仏は〝クレーキング〟ラファエル・ナダル(スペイン)を準決勝で撃破しており、連覇に期待が懸かる。

 2020年はコロナが世界を襲って世の中は一変。そんな中、ジョコビッチは同年6月に非公式の慈善大会「アドリア・ツアー」を主催したが、感染対策が甘くてクラスターを発生させたばかりか、自身もコロナ陽性となってしまった。さらに今年1月の全豪オープンではワクチン未接種で開催地オーストラリアから入国拒否される騒動が勃発。コート上で他を圧倒する一方で、コロナ関連ではトラブル続きとなった。

 だが、エンターテイナーとしての顔もある。佐藤氏が「彼は常にファンを喜ばせようとする気概にあふれている」と言うように、勝利後はスタンドに向かって「私のハートをあなたに」という意味を込めて胸の前から両手をすくい上げるしぐさを取る。また、2016年大会を制した際は赤土にラケットでハートマークを描き、その中で大の字になって喜びを爆発させた。
 
「試合では精密機械のような鬼気迫るプレー。そして勝った後は〝ドジョウすくい〟にしか見えないあのポーズが楽しみです」(佐藤氏)
 
 常に自分を貫き、感情のおもむくままに突き進む――。それによって数々の衝突も招くが、ファンを熱狂させる一因であることは間違いない。