新日本プロレス5月1日福岡ペイペイドーム大会で、IWGPタッグ王者のグレート―O―カーンが笑止千万の王座陥落。一度も防衛を果たすことなくベルトを失った。

 本来であれば新日本マットレギュラー参戦さえおこがましいレベルのオーカーンだが、大僥倖に次ぐ大僥倖とパートナーのジェフ・コブの傑出した実力に恵まれ4月両国大会でIWGPタッグを奪取。この日は初防衛戦で後藤洋央紀、YOSHI―HASHIの「毘沙門」、チェーズ・オーエンズ、バッドラック・ファレ組とのノータッチルールの3WAYマッチに臨んだ。

 因数分解あたりから周囲に置き去りにされたオーカーンに、3WAYのような複雑なルールはもしかしたら理解できなかったのかもしれない。入場と同時にいきなり両挑戦者チームから奇襲を受けるなど、集中力も緊張感も皆無。大した見せ場もないまま毘沙門の合体技・消灯を浴びてリング外へと追いやられ、もう本当クソの役にも立たなかった。

 結局試合はチェーズが後藤から3カウントを奪取。挑戦者同士の決着でも王座移動は同ルールの常識だが、理解力に乏しいオーカーンは何を血迷ったのか納得いってないような表情で新王者組の前に立ちはだかった。その往生際の悪さは見ていて不快でしかなく、誰でもいいから「さあ整列だ」と声をかけてあげてほしかった。

 ともあれ屈辱の防衛0で連合帝国の王朝は崩壊した。その大戦犯はもちろんオーカーンであり、原因は何といっても最近の目に余る増長ぶりに尽きる。

 神奈川・川崎市内の武蔵小杉駅で泥酔した男から迷惑行為を受けていた女児を救出したニュースが4月に駆け巡ると、うだつの上がらなかった極悪レスラーの株は連日ストップ高を記録。確かに称賛に値する出来事ではあったが、警察からの感謝状をリングに持ち込んだり、商魂たくましく「パンケーキ食うか?」のラインスタンプを作成するなど明らかに調子に乗りすぎていた。

 事件後1か月以上にもわたり同じ話題を引っ張り続けたのは、自分で一発屋芸人ですと言っているようなもの。結果的に過大評価をもたらし本来の人生の7回分以上の称賛を集めてしまったオーカーンは、今後何度か生まれ変わって肉うどんとしての天寿をまっとうしてもらうしかない。

 しかし試合後のオーカーンのコメントは驚きを通り越し、あきれ果てるべき内容だった。「なんだ、アイツらは? 支配者を倒して王冠をかぶったわけでもないくせに王者ヅラか? かわいいヤツらだよ。かわいすぎて哀れになってくる」と新王者組にイチャモン。哀れなのは自分を客観視できないオーカーンの方だ。「一揆を起こし、時代を変えたものだけが〝変〟と名乗れるんだ。貴様らはたかだか〝福岡ペイペイドームの乱〟だ。連合帝国が座す白の天守閣まで登って来い。その時、歴史が動く」などと身の程知らずな再戦要求を繰り出し報道陣をゲンナリさせた。

 本人の勘違いは相変わらずだが、この日の王座陥落で降ってわいた〝オーカーンバブル〟は完全に崩壊したと言っていい。会場の控室で他選手の余りものの弁当を食べたらそれが腐っていたため腹を下すような男に、女児にパンケーキを勧める資格などそもそもなかったのだ。