【赤坂英一「赤ペン!!」】トリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)に加え、史上初の本塁打王と盗塁王の獲得を確実にしているヤクルト躍進の立役者、いまやセ・リーグMVPの最有力候補でもある山田は、いわゆる「天然」キャラだともっぱらの評判である。

 例えば「夏場に調子を上げてきたね」と声をかけると「暑いの嫌いです」。「巨人戦に強いじゃない」と水を向けても「巨人好きじゃないです。強いのでできれば戦いたくありません」。表情ひとつ変えずにそんな返事をよこすのだから、親子ほどもトシの離れた私など、どうすれば会話を続けられるのやらと、途方に暮れるしかない。

 しかし、そんな山田、実は頭がいいのではないか。私がそう感じたのは今季の開幕前、巨人との<東京シリーズ>用観戦ガイドのために単独インタビューしたときのことである。昨季、日本人右打者のシーズン最多安打記録193を達成できた理由を尋ねると、山田はいつもの口調で「それは飛ぶボールです」。私がガクッとくると「…というのはナシにしてですね」と、笑いながらこう明瞭に説明してくれた。

「ボク、ずっと引っ張りだったんですけど、去年からライト方向へも強い打球を打てる感覚が少しずつ(身に)ついてきたんです。小学生からずっと野球をやってきた中、初めての感覚でしたね。いままで、ヒットゾーンが90度あるうち、ボクは左半分の45度しか使えてなかった。それが、右半分の45度にも強い打球を打って、90度全部をしっかり使えるようになったんで、ヒットになる確率が増した、ということ」

 この打撃開眼、独特のティー打撃でスイングをチェックする杉村コーチの指導が大きい、と言われる。これについても、山田はよどみなく答えた。

「あのティー打撃をしていると、ポイントが近くなるので、そのおかげで打てるようになったのは確かですね。でも、真中さんにも、監督になる前からいろいろな考え方を教わりました。そういうものを全部足していっていまがある感じです」

 私がいつも感心するのは、相手投手に頭や胸元を攻められた直後、よく次の球を踏み込んで打ちにいっているところだ。

「あんな球は2球続けてこないでしょ、みたいな感覚です」と言うので、怖くないのかと聞き返すと、「そりゃあ怖いっすよ、やっぱ。怖いっす。当たったら痛いですもんねえ」と言っていたが、あまり怖がっているようには感じられなかった。

 トリプルスリーの中で最も大きな課題とされていた30本塁打は、「大概は狙ってませんが、たまに狙って打つこともあります」という。その狙い打ちした本塁打の中でも印象深いのは、昨年7月16日、東京ドームで巨人の菅野から打った一発だそうだ。0―5と5点差をつけられて敗色濃厚な8回に放ったこの1本、「狙ってやる」と思った理由は何だったのか。

「はい、その日が自分の誕生日だったからです」

 うーん、こんなところはやっぱり「天然」なのか、と思わせる。ちなみに今年の誕生日はオールスター前日で試合がなく、2年連続バースデーアーチをかけられなかったのは残念だった、かな?