V奪回に燃える阪神が日本野球機構(NPB)に異例の「苦情申し立て」を行っていたことが判明した。虎が問題視したのは「誤審事件」が起きた12日の広島戦(甲子園)、延長12回、2―2で引き分けとなった試合終了直後に審判の一人が一塁ベンチにいたマット・マートン外野手(33)にいきなり暴言を吐いてきたこと。公平中立であるはずのアンパイアの、まさかの挑発行動にマートンも他のナインも激怒。一触即発の事態になったからだった。

 12日の阪神―広島戦でビデオ判定の結果、三塁打とされた打球が本塁打だった「誤審」が判明。熊崎コミッショナーが謝罪する異例の事態となったNPBには抗議電話が殺到するなど、いまだ波紋を呼んでいる。だが、同試合の審判団による「騒動」はこれだけではなかった。

 阪神球団幹部の一人が「あの引き分け試合の後、本当に腹立たしいことが起きたんだ」と明かしたのが、ある審判によるマートンへの「完全挑発行為」だった。チーム関係者やナインの話を総合すると、延長12回引き分け劇に終わった直後、うなだれた表情で帰り支度をするマートンら阪神ナインがいる一塁ベンチ付近に、この日の審判の一人がやってきて、マートンに向けて「お前はやかましいんや! 黙っておけ!」などといきなり暴言を吐いたという。

 助っ人とはいっても来日6年目。この手の日本語の意味を理解できるマートンは「何言ってるんだ!」とブチ切れ。ゲームセットというのにベンチ前で両者がつかみかからんとする、一触即発の事態に発展した。近くにいた福留も審判のまさかの挑発行為に怒り心頭になりながらも、何とかマートンを抱えるようにしてなだめ、互いに離散させて事なきを得たが、この問題に阪神サイドは激怒した。「NPBに今回、こんなことがあった、と申し立てをした。当該審判への事情聴取は行われていると思う。こんなことは二度と起こしてほしくないと考えている」(別の球団幹部)

 振り返れば、マートンはこの広島3連戦中、球審のジャッジにイライラ続きで、当日12日の試合後は報道陣に「カープの投手の時だけ(ストライクゾーンが)広いんじゃないか? 同じだろうか?」と不服そうに話していた。翌13日の試合でも1、2打席目に連続三振を喫し、さらに同僚・ゴメスの打席の球審判定にも納得できないのか、ベンチで絶叫し、今成ら他ナインに慌てて止められる始末。和田監督は「メンタル面だな」と言葉を濁していたが、ある選手は「伏線があったということ。前の日の一件があったからそこまで怒ったんですよ」とマートンをフォローした。マートンと当該審判との間に“事件”前までに何があったのかは定かではない。ただ、以前からマートンは審判の判定に対して悪態をついてきた。それが審判の暴言行為を招いたのかもしれないが、それにしても、だろう。

 マートンと親しい関係者はこう話す。「マートンは確かに性格的な面もあるが、打撃に関しては人一倍、研究熱心。不振でもふてくされずに懸命に練習するし、他の選手よりも遅くまでビデオ室にこもって真剣に何とかしようとしている。みんなもそれを知ってるから世間的に言われてるような“何だ、あいつは”とは誰もならないんです」

 ヤクルト、巨人、広島とのシ烈な優勝争いの中での阪神の「苦情申し立て」。球団は日ごろのマートンの審判への悪態を正当化する気はないが、今回のことを無視してやり過ごすのはマートンにも、他のナインにも、そしてV奪回のためにもプラスにならないとの判断だ。