強さの秘密とは――。競泳のジャパンオープン最終日(6日、千葉県国際総合水泳場)、白血病を経て東京五輪代表入りを果たした池江璃花子(20=ルネサンス)が、女子100メートルバタフライ決勝を58秒03で優勝。前日の100メートル自由形で優勝を逃しながらも女王の意地を見せつけた。実戦復帰から約8か月で大舞台の切符を手にしたが、本番でどのようなパフォーマンスを発揮するかは未知数。そんな中、五輪2大会メダリストの星奈津美氏(30)はヒロインの“超人的”な一面を明かした。

 2度も負けるわけにはいかなかった。前半50メートルを2番手で折り返した池江は、後半でトップに立つとそのままリードを保ってフィニッシュ。前日の自由形でV逸していただけに「昨日は悔しかったので挽回できてよかった。日本選手権の決勝でしか勝ったことがなかったので、バタフライのほうが不安だったが、自信につながるレースになった」と率直な感想を語った。

 レース前こそ「自信がない種目」と弱気にも受け取れる発言があったが、圧巻の泳ぎに「今回、勝てた要因はやっぱり『強い意志』」と自己分析。続けて「どちらかというと、自分の中ではバタフライのほうが気合も入れていたり、もっと世界に出ていきたいという気持ちが強いからそういう結果になったと思う」と言い切った。

 白血病の闘病生活を乗り越え、実戦復帰からわずか8か月後の日本選手権で4冠を達成。400メートルリレーと400メートルメドレーリレーの派遣標準記録を突破して大舞台の切符までつかんだ。そんな池江とリオ五輪でともに代表メンバーだった星氏は「言葉では軽い感じになってしまうので難しいんですけど、本当にすごいという言葉しかないですよね」と目を細める。

 ただし、日本記録を連発していた病気前の状態とは異なり、本番でどのようなパフォーマンスを発揮するかは未知数だ。それでも、星氏は「力を出し切る能力がすごく高い」とした上で池江の長所を次のように明かす。

「人間、誰しも『もうここが限界』と思うところがありますよね。例えばトレーニングではそこで力を抜くわけではなくても苦しくなって“追い込んでいるつもり”の選手が多いと言われています。もちろん五輪に行くような選手は(力を)出し切れる能力があるんですけど、池江選手はそれを上回るような“出し切り過ぎる”くらいの感じがあるんです」

 トップ選手でさえ極限まで追い込むことは容易ではないが、星氏は「練習の後に吐いてしまうこともあると聞きます。そこまでできるところが、あのようなすごさにつながっているのかなと思いますね」と、池江の“限界突破力”に脱帽した。

 今大会は専門外の平泳ぎにも出場した池江は「疲労がすごかった。普段はこのように違う種目に出ることはないので、五輪は得意分野に集中することができると思う」と力を込める。開幕まで50日を切った本番に向けて、ここからどんな進化を遂げるのか。