私生活の天然ぶりも金メダル級だ。東京マラソンで男子の日本新記録(2時間5分29秒)を樹立し、東京五輪出場に大きく前進した大迫傑(28=ナイキ)の“株価”が急上昇している。ガッツポーズでゴールし、涙を流したシーンはファンの感動を呼んだが、何よりその妥協を許さぬストイックな姿勢が広く知れ渡った。一方でそんなクールな鉄仮面を脱ぐと…。縁の下で支える妻のあゆみさん(31)だけが知る意外な素顔に迫った。

 国民栄誉賞を受賞した元プロ野球選手のミスター長嶋茂雄氏(84)やゴジラ松井秀喜氏(45)は超一流のプレーとは裏腹に、私生活の“鈍感力”が有名だ。競技でより良いパフォーマンスをするにはオンとオフの切り替えが重要。その最たるアスリートが日本記録メーカー・大迫ではないか。

 東京マラソンでの「激走」と「涙」は大きな話題となり、テレビ中継(フジテレビ系)は平均14・6%、瞬間最高20・8%の高視聴率をマーク(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。修行僧のように競技に向き合い、己を貫き通すストイックな姿勢は世間に強い印象を与えた。2日の一夜明け会見でも“大迫らしさ”をいかんなく発揮。歴史的なレースで新記録を樹立した翌日も浮かれた表情は一切ない。時折、笑顔は見せたが、質問には終始クールに答えた。

 そんな大迫について、元SKE48研究生の妻・あゆみさんは「ゾーンに入った時の集中力はすごい。私の話なんて何も聞いてないですから」と語る。その一方、私生活では「車のカギ、時計、パスポートなど大事なものをいつも忘れ、なくします。もう日常茶飯事ですよ」と“オフ状態”の大迫の素顔を明かす。

 拠点を構える米国から国外のレースへ向かう場合、出発間際に「パスポートがない!」「どこにある?」とバタバタするのはお決まりだ。先日はレースで最重要アイテムのストップウオッチもなくして大騒ぎしたという。この“抜けっぷり”が驚異的な集中力につながっていることは言うまでもない。

「パスポートはだいたい私か娘が見つけますね。最近は先回りして手に取り『どこ?』って聞かれたら、すぐに渡せるように管理しています。だから、本人はあまり反省していない(笑い)」(あゆみさん)

 おかげでパスポートを持たずに空港に行ったり、時計を忘れてレースに入る最悪の事態は回避。「家の中で完結させています」と、万全の状態で夫を送り出している。あゆみさんにはもう一つのルーティンがある。レース前に娘の写真をスマホに送ることだ。画面で「既読」になったのを確認すると、妻としての“仕事”が終わる。

 東京マラソンでゴールした直後、大迫は2人の愛娘を抱き締めて号泣。レースに集中できる環境をつくってくれる家族への感謝を、無言の中で表現した。豪快な忘れっぷり、それを支える妻と娘――。ここに大迫の強さが隠されている。