東京・歌舞伎町のぼったくりキャバクラの経営者らが逮捕された。事件は氷山の一角で、歌舞伎町では毎日ぼったくりのトラブルが起きている。被害者は警察に泣きつくが、弁護士は「警察が助けてくれることは100%ない」という最悪の現状を明かす。さらには、警察がぼったくり店の“味方”をするというありえない現実がまかり通っているのだ。

 警視庁保安課は24日までに、客に不当な高額料金を請求し、支払えないと強制的に客引きなどの労働をさせたとして、都ぼったくり防止条例違反と労働基準法違反容疑で、歌舞伎町のキャバクラの責任者(25)と従業員の計5人を逮捕した。

 逮捕容疑は昨年12月1日、飲食店従業員の男性客(32)に対し、身に覚えのない代金51万円を請求。店内で取り囲み「カネ支払わなかったら帰れるわけねーだろ」「うちで働いて返すしかねーんだよ」と言って腹を殴った。同店従業員として客引きなどの仕事を不法にさせて、「もう上がっていいぞ。分かってるかもしれないが、逃げたら殺すぞ」と脅した疑い。5人とも「ぼったくりではない」と否認している。

 いまや居酒屋の世界にも出現するぼったくり。客引きが「1時間5000円で飲み放題です」と言うのでそれを信じて飲んだら、実際は5万円、10万円、今回のように50万円以上も要求され、拒むと脅しをかけてくる。

 ぼったくり被害相談をよく受ける青島克行弁護士(39)は「この店の相談はよく受けていた。歌舞伎町でぼったくりは毎日起きている」と実情を語る。

 ぼったくりに遭わないためには「キャッチについていかない」ことだが、それも無粋な話だろう。悪質店の見極めが大切だ。

「店に入ってから料金表がない。女性がドリンクを水のような勢いでガブガブ飲んでいれば、ぼったくりの可能性が高い」(青島氏)

 数十万円を請求され、払う払わないの言い合いになる。次に交番で話し合おうとする。そこで客は非情な現実を知る。

 青島氏は「警察は100%助けてくれない。『民事不介入』を盾に双方で解決しろと言う。詐欺や脅迫だと必死に訴えても『証拠がないと被害届は受理できない』と言うばかりです」と語る。

 警察なら助けてくれると望みを託していた客の心は一瞬で折れる。相手は何時間でも「払え」と言い続け、警察は仲裁してくれない。結局、財布の現金はすべて取られ、ATMが開く翌朝まで喫茶店で“軟禁”状態に…。

「残りの支払いの約束を一筆書かされ、保険証が取られ、社員証や免許のコピーも取られる。恐怖しか残らない」(同)

 青島氏は「警察のすべきことは『正当に請求ができるなら、後で堂々と裁判を起こしなさい』と店に言って双方を帰らせること。交番には毎日同じ店の被害者が駆け込む。ぼったくりの存在を分かってるのに、こんなことをやってるから警察の罪は重い」と指摘する。

 しかし、信じられないことに、警察が「訴訟費用を考えたら、今払った方がいいよ」と勧めてくることまであるという。
 最後に青島氏は「被害に遭いそうになったら、納得できる金だけ払って、覚悟を決めて身分を明かす。大事なのは、なんとかして帰ることです」とアドバイス。

 身分を明かすのは、正当な料金だというのなら、民事裁判を起こしてくださいという覚悟を示すことだ。裁判で正当な料金であることを証明するのは店側の責任となる。そういうやっかいな相手に対して、ぼったくり店はわざわざ裁判を起こすことはないだろう。新たなぼったくりのターゲットを探すだけだ。