6、7日に九州のほぼ全域を暴風域に巻き込み北上した大型で強い台風10号の影響で、宮崎県椎葉村で土砂災害で男性1人が負傷、男女4人が安否不明となった。佐賀、鹿児島両県では計2人が死亡し、九州や関西などの15県で計110人が重軽傷を負った。約860万人が避難指示・勧告の対象となった台風10号。今年は新型コロナウイルス対策もあり、ホテルを避難先として、観光業界の支援策を利用した「Go To 避難」が話題となっている。

 九州各県では猛烈な暴風によって建物の窓ガラスが割れたり、停電中に自宅で転倒するなど計82人のけが人が出た。空き家が倒壊し、樹木が根こそぎ倒れるなど、多くの地域で被害が出ている。

 台風襲来のたびに避難が促され、多くの住人が自宅を離れて避難所となる地域の体育館などに身を寄せる。

 だが、台風10号では新型コロナウイルス対策として、3密を避けるために収容人数が大幅に減らされ、満員となった避難所もあった。コロナの感染拡大が終息していないこともあり、「地域の避難所に人が集まるのは、感染の危険性があって怖い」との声も多い。台風被害を避け、感染リスクも減らすため、ホテルに宿泊しようと考える人が多かったようだ。

 さらにその際、新型コロナで打撃を受けた観光業界の支援事業として政府が行う「Go To トラベル」キャンペーンをうまく利用した「Go To 避難」が話題となっている。

 同キャンペーンを利用すれば、旅行・宿泊料金の半額(上限1人1泊2万円)の補助を受けられることから、今回も積極的にホテルに宿泊避難する人が多かったという。キャンペーンに加盟しているホテルであれば、新型コロナの感染対策も万全。台風や水害対策でも安心感があるため、利用者が増えた。

 実際、九州地方では、6日にかけて予約が殺到し、満室になるホテルが多かった。

 国内外にホテルを展開する「アパホテル」の担当者は「これまでの台風と比較すると『ホテルに避難』というワードが多く報道され、浸透したこともあり、『避難のために利用したい』という問い合わせや予約が増加しました」と話す。

 台風10号の影響があった6日はアパホテル博多駅前、アパホテル長崎駅前がともに稼働率は約90%となった。

「前週の日曜日と比較し、稼働率はアパホテル博多駅前が14ポイント増、アパホテル長崎駅前は5ポイント増となりました。6日はほとんどの宿泊者が『Go To トラベル』割引の対象者で、宿泊目的を尋ねてはいませんが、半数以上が避難のための宿泊のお客様と考えております」(同担当者)

 当初は新型コロナの感染拡大につながるとして反対の意見も多かった「Go To トラベル」キャンペーンだが、意外な形で観光業界に貢献したようだ。避難する住民も安心できるのなら、今後も役に立ちそうだ。