プロレス界が苦境にあえいでいる。新型コロナウイルス禍で興行の中止、延期が相次ぐ上に、緊急事態宣言の発令により大会再開も見通せない状況だ。各団体は無観客大会の動画配信に活路を見いだそうとしているが、このかつてない難局にどう立ち向かうべきなのか。“燃える闘魂”アントニオ猪木氏(77)を直撃。“無観客試合の元祖”でプロレス界の総帥は「今こそ、発信せよ!」とメッセージを送った。

 新型コロナウイルスの感染拡大のため、観客を入れた通常興行は開催の見通しが立たず、各団体は試合の動画配信サービスに力を入れている。盟主の新日本プロレスも無観客大会の検討に入ったが、“無観客試合の元祖”といえば猪木氏だ。1987年10月4日、故マサ斎藤さんとの「巌流島の戦い」は前代未聞のノーピープルマッチとして行われた。猪木氏によれば、現在の「無観客大会」とは意味合いが違うという。

「あれは時代の変わり目だからできたこと。長州力の時代へと周りが流れていく中で、そうはいかねえぞと。客にこびるプロレスはしねえ、見たくないヤツは見るなと。見たくないヤツは見るわけないんだけどさ、フフフッ…。世間に向けたオレなりの、そういうはっきりとしたメッセージだったんだ」

 実際、テレビ中継された巌流島決戦は2時間を超える死闘となり、伝説として現在まで語り継がれる。燃える闘魂からの明確なメッセージがファンに伝わったからだが、苦境を乗り越えるためにもこの「メッセージの発信」こそが最も必要なことだという。猪木氏は自身が創設した新日プロにあえてこう投げかける。

「最近のことは人から聞くくらいだけど、新日本は何を今後、やりたいのか。オレらの時代は世界を向いていた。興行会社として成功したいのか、あるいは若い人たちにこういうメッセージを送りたいとか。WWEはオレが目指してきたものとは違うけれど、それはそれとして一つの興行会社としてなら正解。(こういう状況だからこそ)新日本としてはっきりとしたメッセージを出してほしい。(メッセージは)戦後のプロレスで大事な部分なんだ」

 これは苦境にあるプロレス界を先頭に立って引っ張らなくてはならない新日プロへ、燃える闘魂からのエールだろう。

 一方でプロレス、格闘界では沈滞ムードを打破するべく今夏の「オールスター戦」開催を望む声も上がるが「やろうという気持ちはいい。希望とか目標とかはね。それは大事な部分。ただ現実的に(コロナ禍は)長引くし、先行きは見えない。こういう時期にみんな集めて…というのはちょっと無理」。

 プロレス界は総帥からの“闘魂メッセージ”をどう受け止めるのか?