カナダの湖に出るUMAといえば、有名なのがオカナガン湖の「オゴポゴ」だ。しかし、カナダには他にもさまざまな湖の未確認生物が存在している。

 オンタリオ州コブデン村近郊にあるマスクラット湖に生息しているとされるUMAが「ムーシー」だ。

 ムーシーの伝説は初期の開拓者であるサミュエル・デ・シャンプランが17世紀初頭に著した書物に登場するという。この時はあくまで「怪物が生息する」というざっくりした紹介にとどまっており、詳しいことは分かっていなかった。

 ムーシーの目撃証言が増えるのは1916年になってから。湖の中を泳ぐ巨大な生物の姿が目撃されはじめたのだ。ムーシーの目撃証言はさまざまであるが、地元の歴史家であるジェームズ・F・ロビソンが記した特徴によれば「3つの目と耳、背中の半分に大きなヒレがあり、2本の足がある。口の先には大きな歯がひとつある。色は銀色で、大きさは約24フィート(約7・3メートル)におよぶ」そうだ。3つの目と耳という特徴は他のUMAにもない、ムーシー独自の特徴であるといえる。

 ムーシーもまた、他の湖のUMA同様に調査が行われたことがある。マイケル・ブラッドリー氏がソナーを備えたボートで湖を調べ、特徴と一致する生物の影を捉えることに成功している。また、マスクラット湖は一番深いところで64メートルはあるとされているため、巨大な生物が生息していても不思議ではない、とする意見を述べる研究者も存在している。また、目撃証言は現代でも継続して報告されており、2010年にはムーシーらしき生物の姿が写真に収められている。

 そんなムーシーは今や地元のマスコットになっているという。一番近いコブデン村では、観光客を歓迎する看板や大きな店舗にキャラクターとして描かれていたり、年中のイベントで登場することも少なくないという。ムーシーの観光的価値は地元自治体に把握されており、なんとムーシーを題材にした地元経済応援ソングまで存在するほどだとか。

 また、日本のUMAである「ツチノコ」同様、「ムーシー捕獲イベント」が開催されたこともある。捕獲イベントが行われるのは未確認生物の宿命なのだろうか。ムーシーの捕獲イベントは1990年代に開催され、捕獲できた人には100万カナダドルが提供される、という触れ込みだったが、案の定、誰も捕まえられなかったようだ。しかし同様のイベントは時々、開催されているとか。

 未確認生物が〝まちおこし〟に使われる事例は多いが、ここまで地元に愛されている未確認生物も珍しいのではないだろうか。