熱男出陣――。2年半ぶりの代表復帰となった松田宣浩内野手(36=ソフトバンク)が28日、侍ジャパンの沖縄合宿に合流した。世界一奪還を目指す「プレミア12」にかける思いは人一倍。その裏には辞退者が相次ぎ、野球ファンの代表熱もどこか盛り上がらない“侍の現実”も。5年連続で全試合出場の鷹の鉄人は「代表活動の意義深さ」を訴えるべく熱く燃えている。

 チーム最年長の松田宣が、誰よりも声を張り上げた。代表メンバー28人が初めて揃った沖縄合宿初日、日本シリーズ終了からわずか3日の休養を挟んで合流した熱男は、疲れを見せることなく軽快な動きを見せた。

 5年連続で全試合出場し、その間、所属するソフトバンクは4度の日本一に輝いた。球宴の常連で、毎年10月末までポストシーズンを戦い、年間最大160試合程度に出場するのだから蓄積疲労も半端なものではない。それでも松田宣は日本一直後の祝勝会でビールかけが終わると「次は世界一を取りにいく。疲れてないと言ったらうそになるけど、俺は骨が折れてなければいくよ。痛いところがあっても、チームに求められて貢献できるのなら絶対にいく」と声を大にしていた。

 シーズン終盤、侍ジャパンの稲葉監督直々に声を掛けられ、招集の意図を伝えられた。2013年と17年のWBC、15年プレミア12も経験。国際舞台での戦いを熟知し、世界の強豪に屈した悔しさも知る。希少なムードメーカーとしての期待も高い。そして何より、松田宣には代表への特別な思いがある。

 今回のチームでは宮崎での合宿直前に松井、森原(ともに楽天)が出場を取りやめ、日本シリーズ後にはエース候補の千賀(ソフトバンク)も辞退した。今回に限らず、過去にも辞退者が相次いだり、選手供出に協力的ではない球団もあった。「個人的な意見だけど、どうしてみんな辞退するんだろう…。俺には辞退という選択肢はない」

 もちろん、選手個々のコンディションや各球団の事情も承知の上だが、松田宣は「手に汗握るとか、緊張で体が固まるとか(プロで)14年やっているけどなかなか体験できることじゃない。侍で感じる重圧、その中でプレーして場数を踏むのはかけがえのない財産。だから、僕は痛くても疲れてても出たい」と熱く語る。

 所属チームで3年連続日本一を達成しても歩みを止めることはない。明るさばかりでなく、飽くなき向上心も松田宣にとっては元気の源となっている。