早実(東京)の清宮幸太郎内野手(3年)が21日、春季高校野球関東大会2回戦(ひたちなか)の花咲徳栄(埼玉)戦で歴代3位タイの高校通算94号を放ち勝利に貢献。22日の準々決勝・作新学院(栃木)は4-8で負けたが、95号を放ち単独3位に浮上した。そんな中、清宮に抜かれ歴代4位に転落した伊藤諒介内野手(24)が“怪物”にエールを送った。現在は社会人野球の強豪・大阪ガスで4番に座る伊藤が明かした母校・神港学園の“タブー”、そして清宮に託した思いとは――。

 ――清宮の活躍で高校通算本塁打に注目が集まっている。身近なところで反響は

 伊藤:うーん、どうですかね。身近ではないです。ネット上とかでは感じますけど。テレビで見ましたが、清宮くんは本当にすごい選手。僕と比べる選手ではありません。ホームランは打てるだけ打ってほしいし、最後の夏に甲子園で活躍する姿も見てみたい。個人の結果や周りの期待にとらわれすぎず、自由にやってほしいです。

 ――伊藤選手自身、高校時代にあれだけ本塁打を量産できた理由は

 伊藤:ご存じかもしれませんが、僕のいた神港学園はグラウンドが極端に狭いんです。ライトが93メートル、レフトも100メートルあるんですが、ポール間がほぼ直線というか、三角形のような形のグラウンドで、センターは105メートルちょっと。土日は毎日ダブルヘッダーで練習試合も多いし、それで伸びてたというのが本当のところ。

 ――それでも当時は歴代1位の94本塁打。そうとう注目されたのでは

 伊藤:どうでしたかね、あんまり意識していなかった。そりゃ(日本ハムの)中田翔選手(の87本塁打)を抜いたときは少しは意識しましたけど。グラウンドが狭いとネットで叩かれてるのは当時から知っていましたし、記録に近づくと無理やり弱い相手と組んだりしてるフシもあって、むしろそこまで打ちたい気持ちはなかったんです。

 ――法大では1年春に当時3年生だった明大・野村祐輔(現広島)からも本塁打を放った

 伊藤:その次の日もホームランを打って、2日連続だったんですよ。でも、大学で打ったホームランはその2本だけ。運がよかっただけです。実は打つほうよりも肩に自信があったんですが、大学ではその肩を故障して腐ってしまった。なかなか気持ちが入らなくて、心の底から真面目に野球に取り組むことができなかった。

 ――高校、大学とプロ入りは考えなかったのか

 伊藤:高校のときは、大学は出ておきたいと思っていた。大学のときは単に実力不足ですね。自分の実力は自分が一番よくわかっている。正直、プロへの憧れも今はもうありません。それよりも、一日でも長く社会人でプレーを続けたいですね。

 ――あらためて清宮にエールやアドバイスは

 伊藤:僕が言えることではないと前置きした上で言うならば(本塁打を)狙いすぎないことですかね。ホームランを打ちたいという欲が強すぎると、体が開いちゃったり、バットが下から出たりして、本来のバッティングを崩す。意識せずに自然体でやってれば、彼なら普通に神港の記録は抜くでしょう。正直、高校通算本塁打のことはもう忘れたいくらいなんです。(歴代1位の107本塁打で神港学園の後輩の)山本(大貴)の記録も、早く清宮くんに抜いてほしいですね。

☆いとう・りょうすけ=1992年6月11日生まれ、兵庫県姫路市出身。手柄小2年生のとき、ソフトボールを始める。中学では硬式野球チーム姫路アイアンズに所属し、3年春に全国制覇。中学生までのポジションは遊撃手。神港学園では3年春に甲子園出場し、2回戦敗退。1回戦の高知戦で本塁打を放った。高校通算94本塁打でプロからも注目されたが、法大に進学。2年秋の神宮大会で準優勝。社会人野球・大阪ガスでは1年目からレギュラー。2015年に都市対抗で準優勝、日本選手権では優秀選手賞を受賞した。174センチ、85キロ。右投げ左打ち。