【柏原純一「烈眼」】甲子園での交流戦・阪神―日本ハム3連戦。久々に新庄ビッグボスの采配を拝見させてもらったが、かなり〝本番〟と位置づける来季の青写真が固まってきたな、と感じた。3日に特大の一発を放った万波、3連戦通じて中軸に据えた清宮は今後も辛抱強く起用を続けるだろうし、ディフェンス面においても、未来のチーム編成において「カギを握る存在」をテスト起用し続けていたように思えた。

 それが25歳のルーキー・上川畑だ。昨年のドラフトで最後に指名を受け、9位入団と上位指名ではないが、さすがは社会人出身。機敏かつ、次のプレーを予測したうえの身のこなしで打球をさばける器用さは、センスの良さを感じる。

 前カードの広島戦(マツダ)、そして甲子園での阪神戦と内野が土のフィールドの6試合で二塁、遊撃と継続して先発させたワケには、人工芝の本拠地・札幌ドームよりも、さらに脚力が必要とされ、高い守備力が要求される環境下で「どの程度できるか?」を見ておきたかったことが考えられる。

 実際、二塁、遊撃ともに守備は一軍レギュラークラス。打撃も小柄だが決して非力ではなく、スイングはコンパクト。常に強い打球を打つことを心掛けており、ルーキーとはいえ「自分の生かし方を知っている」ように見えた。そもそも日本ハムは代々守り勝ってきたチーム。守備には人一倍こだわりのあるビッグボスも、センターラインである内野の二遊間には、このコンセプトを忠実に遂行できる人材をレギュラーに置くとみる。

 5日には〝苦い経験〟をしたことも、先々を考えれば収獲だろう。0―0の3回。一死一塁から中野の二遊間付近の打球で6―4―3の併殺が奪えず、その後、先発・吉田が大山の被弾などで4失点。あのプレーだけは打球への反応が一瞬、遅れ、捕球後のもたつきが併殺完成の足かせとなった。「併殺」となっていれば、試合はまったく違ったものになっていた。

「自分のたった一つのプレーでチームは負けた」。この世界の〝怖さ〟を改めて肝に銘じ、今後、さらに鍛錬を重ねていけば、この1メートル67センチの小兵は「ビッグボス野球」に不可欠なピースになるのではないかと感じた。(野球評論家)