虎のリードオフマンとして打線をけん引し続けた近本光司外野手(27)は、自己最高となるリーグ4位の打率3割1分3厘でシーズンをフィニッシュ。オフの契約更改では倍増となる推定年俸1億5000万円をゲットし、入団3年でチームの顔にまで成長した。

 2022年シーズンは200安打到達すら視界に入りそうな背番号5の打撃の最大の特徴は、初球やカウントノーストライクからの早打ちだ。初球の打率は4割4分8厘。カウント1―0からの打率は4割5分1厘と積極的な仕掛けでセ・最多となる178安打を量産した。

 その代償として、四球数はセ規定到達打者31人中最下位の33と非常に少なく、出塁率も同13位の3割5分4厘。先頭打者としては物足りない数字だけに、近本の1番打者としての適性を問う声も少なくない。事実、矢野監督も近本入団以降2番、3番打者としての起用をたびたびテストし、最適解を見つけようと腐心してきた。

 社会人時代、近本を5番打者として起用していた大阪ガス・橋口博一元監督(54)は「近本在籍時のウチは小深田大翔(現楽天)も含め、1番から4番打者が固定されていましてね。消去法というわけではないのですが、当時負傷でシーズンに出遅れていた近本を5番に当てはめただけです」と笑いながら述懐する。

「勝負強く小力もある選手ですので、社会人レベルなら3番、5番を務められる能力はありました。ただ、プロのフィールドなら1番打者としての起用が最も正解に近いように私は思います。出塁率こそ高くはありませんが、得点数はリーグトップの91ですしね」。出塁率が低かろうと、チャンスメーカーとして今季誰よりも多くホームに生還したのは他ならぬ近本だ。

 早いカウントからの積極的な仕掛けも、社会人時代から変わらない。「大体アイツが調子の悪い時っていうのは、思い切りが悪いんですよね。初球を振ることができない(笑い)。今でもたまに彼とはメールのやりとりをするのですが、『思い切っていかんかい!』とは何度となく伝えています。積極的に振りに行くスタイルは今後も貫いてほしい」(橋口元監督)

 どの打順に入ろうが近本は近本でしかない。頼れる虎の切り込み隊長は、これからも敵陣に強烈な〝一の太刀〟を鋭く浴びせる。