「菅野イズム」の伝承はなるか。メジャーの夢を断念し巨人残留が決まったエース・菅野智之投手(32)が若手バッテリーの〝鬼教官役〟として期待されている。巨人は5日に菅野が海外FA権を行使せず残留することを発表。昨オフにはポスティングシステムを使いメジャー移籍を模索した右腕も来年は33歳。年齢的にもメジャー断念の見通しとなったエースには大仕事が残されているという。

 昨オフ、ポスティングでのメジャー移籍は条件面で折り合わず、今季途中に海外FA権を取得していた。シーズン終了後、熟考を重ねていたが球団に海外FA権を行使しないことを通達。これにより来季のエース残留が決まった。

 今年10月に海外FA権を取得した菅野は「長く一軍でプレーできたことの証しなので素直にうれしいです。野球人生の励みにして、さらに自身を高めていけるように」とコメントしていた。

 ようやく手に入れた権利を「行使しなかった」…というよりは「できなかった」ということか。ポスティング交渉からの帰国時、右腕は「いろんな話をする中で100%自分の中で納得できるものがなかった。まだアメリカに挑戦するチャンスというのは残っていると思います」と再挑戦を示唆していたが、今オフはMLB側の状況が一変した。

 今月2日、MLBは選手会との労使交渉の決裂によりロックアウトに入った。すべての契約交渉がストップし、来季開幕がずれ込む可能性まで取り沙汰されるなど、不透明な状態となっている。

 環境を考慮したうえで残留を選択した菅野にとっては、無念の思いもあるかもしれないが、チームとしては朗報だ。そんな菅野に、チーム内からはさっそく期待の声が上がっている。

「菅野がアメリカに行っていたらムリだったけど、こういう形で残留することになった。エースとして戦力になるのは当然として、ぜひ一軍未経験の若手バッテリーの〝鬼教官役〟になってほしい」(球団関係者)

「常勝軍団」復活に向け巨人フロントがカギと見るのが近年のドラフト組。特に20年ドラフト2位・山崎伊織投手(23)、19年ドラフト1位で育成の堀田賢慎投手(20)のトミー・ジョン手術経験組は、将来のローテ候補に挙がっている。さらに今年は新人7人中6人を投手で固めており、順調に成長できれば「投手王国」も夢ではない。

 また好成績に必要なのが捕手を含めたバッテリーとしての総合力。捕手にも来季3年目・山瀬慎之助捕手(20)、同2年目・喜多隆介捕手(23)ら一軍未出場組が控えている。

 残留によりエースの投球術を若手バッテリーがブルペンで実際に体験できる。東海大の後輩である山崎伊は菅野の自主トレに帯同予定で「菅野イズム」を全身で吸収するつもりだ。

 菅野自身は今季、ケガに見舞われ4度の登録抹消を経験。五輪代表を辞退するなど、成績も6勝7敗、防御率3・19と奮わなかったが、昨オフの大半を交渉に費やしたことも不振の原因のひとつ。どっしりと日本に腰を落ち着けた右腕が、教官役とエースの〝二刀流〟でチームを日本一に導けるか。