セのヤクルト同様に2年連続最下位から一気に頂点に駆け上がったオリックス。1996年以来25年ぶりの優勝に導いたのは何といってもエースの山本由伸(23)だ。18勝5敗、防御率1・39と圧倒的な成績を残し、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、勝率の投手4冠が確実。MVPも当確だ。まさに八面六臂の活躍に本紙評論家の前田幸長氏は国内無敵だった渡米前年のダルビッシュ有投手(パドレス)や田中将大投手(ヤンキース―楽天)よりも上と指摘し、今オフのメジャー移籍に期待した。

【前田幸長・直球勝負】大黒柱としてチームを25年ぶりのリーグ優勝に導いたエース山本由伸に異名をつけるとするなら「日本球界を代表するピッチング・モンスター」だろう。

 フォーシーム、カットボール、パワーカーブ、フォーク、スライダー。全ての球種が一級品で、どれも決め球にできるうえ、きっちり三振も奪える。精密機械のようにコントロールも抜群だ。引き出しの多さも特徴で、ここぞという場面ではエグいツーシームで左打者の外角、右打者に対しては内角を突く。打者としては一体、何の球種に絞って打ちにいったらいいのか分からない。

 文句なしでNPBの投手ではナンバーワンの実力者だろう。まだプロ5年目の23歳。どこまで成長していくのか末恐ろしい。完成度の高さで言えば、2011年に自己最多の18勝を挙げたダルビッシュ有(日本ハム)、シーズン24連勝した13年の田中将大(楽天)がメジャー挑戦の前年に見せた当時のポテンシャルをも超えていると思う。

 今夏の東京五輪でも日本のエースとして金メダル獲得に貢献した。NPB、さらには国際試合でも常に冷静沈着なメンタルとともに鮮烈な投球内容を見せつけた山本にはMLBのスカウトたちも熱い視線を送っていると聞く。個人的な興味で言えば、今オフにでもMLB移籍を実現させてほしいぐらいだ。

 メジャーで山本と似たタイプを挙げるなら、今季16勝でア・リーグ最多勝に輝いたヤンキースのゲリット・コールだろうか。体格では劣るが、フォーシーム主体で豊富な球種と制球力の高さを誇るMLB屈指の右腕と比べても遜色はない。

(本紙評論家)