〝エラーの泰示〟がゴールデン・グラブ賞受賞 思い出す3・11のひとりノック

2020年12月23日 14時00分

巨人時代はポロリを連発

【赤坂英一 赤ペン!!】えっ、タイシがゴールデン・グラブ賞だって? 日本ハム・大田泰示外野手(30)が今年“守備のベストナイン”GG賞をパ外野手部門で初受賞したことに驚いた巨人関係者は少なくないだろう。

 大田といえばエラー。ドラフト1位で巨人に入団し、2009年から16年までプレーした8年間、大田にはとにかく守備が下手というイメージがついて回った。

 私が忘れられないのは、大田が内野手だった11年3月11日。東日本大震災が発生し、首都圏に帰宅困難者があふれていた中、夕方5時半ごろまで、ひとりジャイアンツ球場でノックを浴びせられていた。

 しかし、そうした努力もむなしく、8日後の二軍開幕戦では最初の守備機会でトンネル。この年の6月に二軍で外野にコンバートされた。が、外野ですら一向に上達しそうな気配がない。

 そんな迷える大田に、2000安打した巨人OB・駒田徳広氏はこういう助言をしている。

「お前は真面目過ぎるんだよ。どんな場面でも100%の力でプレーしてるだろ。でも、例えば二死走者なしの打席とか、気楽にやっていい場面もある。いい加減にやれば、意外にいい結果が出るもんなんだよ」

 しかし、当時の大田は松井秀喜氏の背番号55を背負わされ、常に球団や読売上層部の厳しい視線にさらされていた。「大田はまだあの程度か」という評価が本人の耳に届いたこともあり、かなりのプレッシャーになっていたという。

 北海道の日本ハムでそんなストレスやしがらみから解放されるや、眠れる才能が一気に開花。移籍1年目の17年からレギュラーに定着し、毎年2桁本塁打をマークする主軸に成長した。お立ち台で「ファイターズ最高!」と絶叫するパフォーマンスでも大人気を博し、キャラまで“確変”している。

 こうして大田がブレークしたころ、元巨人の先輩・木田二軍総合兼投手コーチも、こう言って目を細めていたものだ。

「大田はウチでいろんなことにチャレンジしている。温かい目で見守ってやってください」

   今季はパ外野手部門でリーグ2位の7補殺を記録。これほど守備力が上がったのも、木田コーチの言う「チャレンジ」のたまものだったのか。最後に、私もGG賞で大田に一票投じたことを付け加えておきます。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。