“浩二魂”を受け継いだ広島・佐々岡監督の手腕に注目

2020年02月11日 11時00分

8日に広島キャンプを訪れた山本氏(左)

【赤坂英一 赤ペン!!】病床から復帰した山本浩二さんのキャンプ訪問は、広島・佐々岡監督にとって特別感慨深かったに違いない。新人だった1990年、初めて仕えた監督が山本さんだったからだ。エースでありながら先発、抑え、中継ぎとすべての役割を担い、人一倍奮投したのも山本監督時代だった。

 1年目の90年、先発としてスタートした佐々岡は、早くも5月に抑えに回される。守護神の津田恒美(故人)が脳腫瘍で戦列を離れたからだったが、なぜ経験豊富な先輩たちではなくて自分なのか。首をひねった佐々岡に山本監督はこう説明した。

「おまえ、西武とのオープン戦でリリーフをさせたら、無死満塁から0点で抑えたやろ。あのときから、抑えでもいけるぞと思うとったんじゃ」

 佐々岡自身は、そんな好投をしたことなどすっかり忘れていたという。この一件は、監督はどのように投手の適性を見極めるのか、佐々岡がそういうことを意識するきっかけにもなったようだ。

 現役18年間で通算138勝106セーブ(153敗)を挙げた佐々岡は2004年以降、3年間を中継ぎとして過ごしている。当時自らこの配置転換を申し出たのも、2度目の山本監督時代だった。「中継ぎが手薄になっているから、ぼくがやります」と山本監督に進言したのだ。

 佐々岡ほど実績があれば、自分の成績にこだわって先発に固定するよう望んでもおかしくない。が、佐々岡は「先発だけでは18年も続けられたかどうか。いろんな経験を積んだから、あれだけ長くやれたんだと思う」と話している。その最初のきっかけは様々な適性を見いだされた山本監督の慧眼にあったわけだ。

 佐々岡監督の投手起用と育成には、そんな現役時代からの蓄積が生きている。投手コーチだった昨季は2年目の遠藤を初登板させ、中継ぎに定着させた。山口にも初先発のチャンスを与えて、初勝利を挙げさせている。

 そこで今キャンプではこの2人に先発ローテ入りを競争させることを決定。だらしない投球をすると、激しくハッパをかけたりしている。こうなると、実績のある今村、中崎、一岡なども安閑としてはいられない。

 開幕するころには、大瀬良、ジョンソン以外、投手陣の顔ぶれがガラリと変わっていることも考えられる。“浩二魂”を受け継いだ佐々岡監督のお手並みに要注目だ。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。毎週金曜朝8時、TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!」出演中。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」(講談社)などノンフィクション増補改訂版が電子書籍で発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」(PHP文庫)など。最新刊は構成を務めた達川光男氏の著書「広島力」(講談社)。日本文藝家協会会員。