球団ワースト更新となる5年連続V逸の危機を救った原辰徳監督の手腕もさることながら、個性的なメンバーたちの活躍も見逃せない。そこで本紙特選の優勝秘話を大特集。まずは第3次原内閣で三塁ベースコーチを務め、精神的な面でもチームを支えた、元木大介内野守備兼打撃コーチ(47)が独占手記を寄せ、その内幕を明かした。
選手で優勝の喜びは4度味わっているけど、コーチでは初めて。しかも1年目。まだ実感は湧いてこないね。
コーチとしては選手とのコミュニケーションを大事にしてきたつもり。キャンプから内野手とはほぼ全員、何度も食事に行った。ただ、和真(岡本)とヤス(山本)、尚輝(吉川)の3人はもう焼き肉の食べ放題でいいかな。焼き鳥屋でお酒を一切飲まず、コーラとウーロン茶と米で延々と食べていたからね。やっと出てきた焼き鳥を一瞬で平らげ、チビチビ飲んでいる俺は…。スピードが違いすぎる。
コーチはただ単に教えることが仕事じゃないと思っている。俺が正解でもないし、俺より成績をあげているヤツはいっぱいいる。それを偉そうに、あれをやれ、これをやれとだけ言うのはコーチじゃない。俺が現役の時も、そういうコーチは嫌いだった。
去年のことはテレビ画面でしか知らない。キャンプの時には、ベテランと主力とどう接していかなきゃいけないかを感じた。まず主将の勇人(坂本)には「元気よくやろうな。優勝するために、下を引っ張っていってほしい」と伝えた。同じやるにも明るくやった方がいい。つらいノックだって黙ってやっていたら、余計に長く感じる。俺だってつらい…。見ていたら一番声を出しているのは、やっぱり勇人だった。俺も「元気ないね、ノッカー!」とかイジられて。いいことだと思った。俺も現役時代に須藤さんに「届かねえよ、おじいちゃん!」とか言いたい放題だったし、それも楽しかった。
ただ、ノックの本数なんかは減るけども、特別扱いはしたくなかった。いいプレーをすれば褒めるし、ミスをすれば怒る。勇人にも「しっかりやれ!」と言ったし、若いヤツには試合中に監督の目の前で「野球をナメるなよ!!」とも言った。
いくら原監督だといっても、監督の顔色を見て野球をやっているつもりはない。顔色をうかがっているようじゃ、選手にすぐに見透かされる。選手というのは敏感だから。コーチが選手に「俺たちのため、ジャイアンツのためにやってない。監督の顔色見てやっているな」と思われたら終わり。そんな姿は絶対に見せちゃいけない。俺がダメなら、選手の目の前で殴られたっていい。選手らに、監督がここまで怒っているんだと伝わればね。
選手たちにはジャイアンツが好きで、ジャイアンツでユニホームを脱ぐんだという集団であってほしい。そして、一年でも長くジャイアンツのユニホームを着ていてほしい。今の球界は、チームよりも自分の成績が良ければ、それでいいという選手が多すぎる気がする。エラーをしても平気な顔をしているのもいれば、ヒット1本打って喜んでいるのもいる。ちょっと頑張れば、すぐメジャーに行く。勝手に行けばいい。その代わり、二度と帰ってこないという覚悟で行ってもらいたい。
だけど、ユニホームの胸に「GIANTS」が入っている選手なら、最後までジャイアンツのために働いてほしい。ただ、この世界は甘くない。いつ球団から「脱げ」と言われるか分からない。だから、昨秋から選手たちに「ユニホームを脱いだら大変だぞ。テレビとか、簡単に仕事があると思ったら大間違い。今から必死になってやらないと」とずっと言ってきた。なぜなら、俺自身がそう感じたから。毎年新しいヤツが入ってくるわけだから、必ず脱ぐヤツが出てくるのに、まだまだノンビリしているようにも感じる。自分は一軍だから? トレードに出されちゃうよ。クビになって必死にトライアウトを受けたって、球団が「いらない」と言った選手を簡単に獲ってくれるほど甘くはない。
それでも、レギュラーの選手とベンチにいる選手との違いは、いろいろなところで見えてくる。一軍にいるからいいではなく、ベンチで展開も配球も読まなきゃ。まだ指示を待っているヤツが多い。「準備しろ」「準備します」だったら誰でもできる。代打だなと思ってパッと見た時には、もうバットを振っているとか。自分の立場、試合の状況を把握し、自分で考えて動けるようにならないと、自分が損するぞ。
俺はずっと「声を出せ!」と言ってきた。「声を出せ」というのは、ただ元気よくっていう意味じゃない。野球を覚えろってことだよ。声を出せない選手というのはボーッと見ているだけ。考えて試合を見ていないと声は出せない。
今後、勇人や慎之助たちがみんないなくなったら、今いるヤツらがやらなきゃいけない。やらなければ、誰かが下から上がってきて、ユニホームを脱がされるだけ。ショートに勇人さんがいるから無理だな…じゃないよ。追い抜こうと思ってやらなきゃ。だって、みんな仕事だろ!? そんなメンバーが一人でも多く出てきてほしい。
(巨人内野守備兼打撃コーチ)
もとき・だいすけ 1971年12月30日生まれ。大阪府豊中市出身。上宮高から1989年のドラフト会議でダイエーから外れ1位で指名されるが、1年間ハワイに野球留学。翌90年にドラフト1位指名された巨人に入団し、相手が嫌がるプレーでも魅了し「クセ者」と称された。2005年に戦力外通告を受け、他球団からオファーもあったなか巨人一筋を貫いて引退。タレント活動を経て、今季から指導者として復帰した。右投げ右打ち。180センチ、82キロ。












