8月10日に開幕する予定だった第102回全国高校野球選手権大会(甲子園)が中止の方向となっていることがわかり、現場の指導者らに衝撃が広がっている。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止となった3月の選抜大会に続き、日本高野連は20日の運営委員会で中止を発表するとみられる。しかし、目標を取り上げられた3年生にとってはあまりに酷な事態だけに現場からは悲痛な叫びも聞こえてくる。

 全国を対象とした緊急事態宣言が14日に39県で解除されたものの、多くの学校が休校やオンラインによる遠隔授業を強いられ、今も部活動再開のめどが立たない地域は多い。高野連の関係者は「(開催への)ハードルは高い。選抜大会の時よりも練習が積めていない状況。授業の問題や熱中症のこともある」と指摘。7月中旬にすべての地方大会が開幕していないと、8月上旬までに代表校が揃うのは困難との見方を示した。

 しかし、チームを率いる現場指導者の立場からすれば、すぐに納得できるものではない。ある学校の監督は「ショックどころじゃないですよ。生徒にどう説明すればいいのか…。選抜の時も出場校は気の毒だったけど、まだ“夏に向けて頑張ろう”と前向きなことが言えたと思うんです。でも夏がないとなると3年生は何のためにやってきたかわからない。何を言ってもきれいごとに聞こえてしまいます」と頭を抱えている。

 練習不足によるケガや熱中症のリスクなど、主催者側は常に選手の健康面を優先させる考えを示すが、これについても「生徒は命がけだし、倒れてもいいという思いでやっています。屋外競技なのでしっかり指導者が見てあげればプレーできます。守備位置だって距離があるし、円陣や伝令での内野の集合をなくせばいい。練習不足といってもどこも条件は同じだし、できる範囲の最低限の準備はみんなやっていますよ。健康面のことを言うなら現場に判断を任せるべきなんじゃないでしょうか」との声も…。選手の思いを最も理解するだけに無念さは計り知れない。

 では地方大会はどうか。高野連は地方大会の一律中止の決定はせず、各地区の判断に委ねている。だが、感染者数の大小で判断に地域差が生じ、47都道府県の足並みが揃わない可能性がある。当然、感染者数の多い地域は自治体も含めて慎重になり、少ない地域は練習再開も早く、開催に積極的となるはず。これについても「47都道府県でやらせてあげたいですよ。どの地域でも最後の3年生という立場は同じ。無観客でスタンドは保護者だけとか、応援も拍手と太鼓だけとかね。テレビ中継してもらえばいいし、全国大会は無理でもそれに代わる“決戦”があるなら3年生の思い出になります」(ある学校関係者)と訴えた。

 選抜に続いて球児を襲ったコロナショック。野球だけにとどまらず、他の部活動でも何らかの形で“高校最後の集大成”を飾ることができればいいが…。果たして大人たちはどんな判断を下すのか。