プロ野球の12球団が26日にオープン戦残り全72試合を無観客で実施することを決めた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相のスポーツなどへの自粛、規模縮小への要請を踏まえて対応したもの。では、3月19日に開幕する春の選抜高校野球はどうなるのか。すでに出場を決めている高校球児たちの「夢の舞台」は消えてしまうのか――。

 日本野球機構(NPB)のオープン戦無観客試合の決定を受け、第92回選抜高校野球大会(3月19日から13日間=甲子園球場)を主催する日本高野連と毎日新聞も日々、協議と対応に追われている。3月4日の運営委員会で国内の感染状況、他競技の開催状況を見て運営方針を決めることになるが、政府がイベント中止を呼び掛けた3月15日までに事態が終息に向かう保証はなく、さらに拡大している可能性もある。となると大会関係者は最悪の事態を想定せざるを得ない。

 考えられるのはNPBのオープン戦同様の無観客試合だ。ある大会関係者は「高野連にすれば絶対に開催はしたいはずです。ほとんどの球児にとって出場は一生に一度のこと。21世紀枠の学校なんかは夏は厳しいでしょうから。中継局のNHKと毎日放送も無観客になっても試合が行われるなら中継はするし、ニーズはある。それに準ずる番組も試合に向けてのものならできる。でも無観客では選手の家族や在校生、OBらが甲子園に来られない。当然、主催者の入場料収入もなくなる」と危惧している。熱戦は繰り広げられるとはいえ、高校野球の象徴でもあるスタンドの応援風景は見られなくなる。

 人混みの混雑回避という意味では試合のみならず、抽選会にも危険が伴う。今大会の抽選会は13日に大阪市内の会場で行われ、学校関係者は1校につき監督、部長、主将の3人。しかし、主催関係者や報道陣も含めると何百人にも膨れ上がり、そのため「代理抽選というやり方もある。一堂に会してやるのではなく、小規模に代理人が非公開でくじを引き、結果だけ発表するやり方もある。13日にやらなくてもいい」(放送関係者)との声も上がっている。

 抽選会前日に行われるセンバツ恒例の「キャプテントーク」も32校の主将が集い、前日から寝食をともにするだけに抽選会と同様に開催が微妙になってくる。他にも開幕直前の甲子園練習、開会式のリハーサル、仮に無観客で開幕したとしても「開会式は全選手が集まり、音楽隊も入ってくる。もう言いだしたらキリがない」(同)など不安のタネは尽きない。

 高野連がセンバツの無観客を決定すれば、それが今度は逆にプロ野球に影響を与えるケースも考えられる。プロ野球の開幕はセンバツ開幕翌日の3月20日。そのため「高校生が甲子園で無観客でやっているのに、プロはドームでどうなんだっていう話になる。野外より空気が循環するドームの方が危険なわけで、高野連の決定をプロも無視できなくなる」(同)という。

 現時点では大会チケットは予定通り発売されるが、発売後にどういう状況になるか…。事態が終息に向かい、関係者の最悪シナリオが杞憂に終わることを祈るばかりだ。