まずは画像を見てほしい。古い絵ハガキのようだが、そこには非常に巨大な魚を引き上げようとしている人間が捉えられている。添えられた文章によると、米国・ニューヨーク州のコネサス湖での漁の様子を写したもののようだ。だが、魚のサイズは釣り上げた男性を丸のみできるほどの大きさがある。このような魚が存在したのだろうか?
この魚は「ウィッフェンプーフ」または「ギリ・ガルー・フィッシュ」と呼ばれているもので、20世紀初頭には米国の湖に生息していると考えられていたものだ。
脂の乗った魚であり、円形の湖に生息していると考えられていた。捕獲は難しく、姿を見かけた場合は湖の中央に移動して、チーズをエサに釣り糸を垂れると捕獲できるという。ウィッフェンプーフが好むチーズはスティルトン、ブルー、リーデルクランツなどの匂いが強めのもので、すぐに食いついてくると伝えられている。
ウィッフェンプーフはボーイスカウトの訓練によく使われたそうで、釣る時は、まきほどの大きさの木にたくさんのくぎを打ち込んで釣り針の代わりにする。そしてベテランのボーイスカウトと新米のボーイスカウトがともに作業をすることで、良い訓練になるのだという。
しかし、いくら写真にその姿が捉えられているとしても、このような生物が本当に存在し得るのだろうか。
確かに美味であり、池の主として大きく育つ巨大魚の未確認生物として我が国の「タキタロウ」が類似の例として挙げられるが、タキタロウは大きいとはいえ、まだ倍数体などの可能性が考えられる現実的な大きさであり、人間を丸のみできるほどの大きさではない。ウィッフェンプーフのサイズは明らかに規格外なのだ。
実は、このウィッフェンプーフは当時の人々による創作の産物だった可能性が高いと見られているのだ。この連載でも過去に紹介した「ジャッカロープ」や「ティジー・ウィジー」のように、猟師や木こりなどの山で働く人たちの誤認やほら話から生まれたものではないかと考えられている。
ちなみに「湖や川に巨大魚がいる」という話は米国でもポピュラーなもので、この記事で紹介したものと同様の合成写真は各地で作成されている。
他にもこの生物は芝居や小説などの創作の世界であたかも実在するかのように紹介されたことがままあり、それは往々にして舞台俳優のアドリブなどであることが多かった。それゆえに当時の人々の想像力をかき立て、実在するかもしれない、少し変わった、でも捕まえられるかもしれない巨大魚として信じられるようになったのかもしれない。












