阪神の佐藤輝明外野手(22)が早くもゴジラ超えだ。28日の西武戦(メットライフ)でプロ初となる1試合3本塁打を放ち、新人時代の松井秀喜(巨人)を超える13号をマーク。驚弾を連発させる怪物ドラ1ルーキーを筆頭に2位の伊藤将司投手(25)、6位の中野拓夢内野手(24)など今季の猛虎の快進撃には新人たちの躍動が欠かせない。そんな中、さらにもう一人、期待の即戦力が加わる。2016年の選抜V右腕でもある男は矢野燿大監督(52)がドラフト時に指名を猛プッシュした秘蔵っ子でもある。

 開幕から充実の猛虎の先発陣に新たなピースも加入予定で、さらに余力を蓄えつつある。26日に一軍合流、30日の西武戦でプロ初先発が有力視されるドラフト5位新人・村上頌樹投手(22)で、特筆すべきは矢野監督が右腕にまつわるドラフト指名時の「千里眼」だ。

 村上は智弁学園(奈良)のエースとして16年のセンバツで優勝、東洋大へと進み、大学3年春には東都リーグで最多勝・防御率・ベストナインの投手3冠を達成するなど20年のドラフトの目玉的存在でもあった。だが、直前の秋のリーグ戦で右ヒジを故障。その後、リーグ戦に登板することなく大学でのキャリアを終えたため、多くの球団が指名を見送る決断をしていた。

 これに“待った”をかけたのが矢野監督。ドラフト直前の会議でスカウト陣の見解に理解を示しつつも患部のリハビリを含め、自主トレから計画的に治療と強化に取り組ませることで1年目から戦力になり得ると判断。「5月には一軍で投げれるんじゃないか?」と、体さえ万全になれば再びプロで即通用するレベルのパフォーマンスができるはずと見込んで指名に踏み切った。そんな指揮官の“復活計画”はシナリオ通りに進み、いよいよ着地点に差し掛かっている。

 二軍キャンプのリハビリ組から、実戦投球再開を経て、ウエスタン・リーグでは6試合に登板し防御率2・25。満を持して一軍に昇格した村上はプロ初登板へむけ「チームのために一試合でも一球でも多く貢献できるように、しっかり腕を振っていきたい」と初々しく意気込んだ。

 スカウト顔負けとも言える矢野監督の先見の明には驚かされるばかりだが、結果として「故障さえなければ…」ドラ1、2位などの上位指名が確実だった大卒右腕が、早くもこのタイミングで一軍戦力に絡んできた。

 この事実は現段階でもリーグ有数の充実の布陣を誇る21年版虎投手陣にさらなる厚みを持たせることになりそうだ。